だから僕は喋るのをやめた

あまりにも皆がしゃべるものだから、ネコは耳を塞いだ。


伝わらないから会話するのに、伝わった後はもっと遠くなる。


イヌのしっぽのように。

ヒツジの頬ずりように。


一言も喋らないそれに遠く及ばない言葉で、終わらない音の連弾をいつまでも。


未来を語る君は、なぜ一人の時に影を落とすのだろう。


今を照らされた僕は、なぜ言葉の殻で身を守るのだろう。


過去を積み重ねたあなたは、なぜこの文字の羅列に目を通すのだろう。


目に映るものだけが真実で、投げ掛けられた言葉は速度を失って地に埋もれた。


温もりを失った唇は静かに閉じて。


カーテンを閉めた夜のワンルームで抱き合いたい。




遮断機の音がようやく届くこの部屋の暗闇の中で。



今、君と目があった。

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