やがて雨水は水車を回す

妥協の日々を流れ続け。


三角州に埋まるザリガニの死体のようになりたくはない。


急流を奏でるバイオリンのような軽快さで。


早朝の山を駆け降りるその潔さ。


失う恐れなど無く、流れ落ちることに生を込めたその命は。


凍てつく寒さの中ですら、流れは時間を止めてまでそこに存在し続ける。


春の雪解けを待つ輝き。


止まってもなお、輝けるのは。


やはり、流動を内包した氷になったから。


ただ、流れ、爛れ、腐るならば、せめて地球を痛めぬように。


火口に身を投げて人生を終えるような劇的な死を。


渓流の輝きにさえ劣る命の穢れよ、どうか洗い流してほしい。


苔の生えた水車のように、情けなく、僕は流れを待ち続けている。

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