電子日記に意味はない

矛盾する話。


本が好きだ。文字が好きだ。


人と話すのが好きだ。


けど、ネットで文字を読むのは、まだ何となく嫌いなんだ。


文字には速さが乗りづらい。


人が言葉を話すとき、そこには温度が、速さが含まれる。


人間は無意識に言葉に含まれる熱を求めている。


無音の部屋に耐え切れずTVを点けるように。


運転中にラジオを流すように。


訳もなくYoutubeを見続けるように。


ぬくもりを求めて淋しさを紛らわす。


速さも熱もない文字は、音を消す。


紙の本に集中した時は、まるで文字が音を吸ってしまったように静かで。


心が乱れた時の文字は、まるで心の音を拾ったように汚くて。


キーボードを叩いて出力される文字は、礼儀正しすぎて無個性だ。


無個性なフォントに、強烈なスパイスを混ぜたくて、文体のクセが強くなっていく。


叫んでいるように痛々しいんだ。


こんなこと言っても仕方がないけれど。


やっぱり手を動かして引いた線が心に響く。


こんな時代はありがたいけれども、キーボードで書いた字は、どうしても線が霞む気がして。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る