ゾンビにベホマズン

知恵を求めたゾンビは「人間になりたい」と書き綴る。

せめて文字が書けた自分に、まずは祝福を。

人間になるためには、人間が持つ魔法を覚えないといけない。

感情を取り戻せ。乾いた五感に恵みの水を。


まずはコップに水を入れ、ゆっくりと飲んでみる。

心がざわついているのが分かる。

何かしていないと落ち着かないのだ。

スマホ、TV、新聞。

何かしていないと落ち着かない。


ゾンビ、「落ち着かない」の呪いにかかっていると気付く、

少なくとも、書いている間は両手と目は塞がるから、何も「ながら」ですることは出来ない。

書き終わり、読んでみると、そこには鏡に映る自分がいた。

せわしなく文字はブレ、言いたいことも散漫だ。

これが、ゾンビの私。

こんな私にもし、司祭が来て、「あなたはこのままで良いのですよ」なんて言われたらきっとゾンビのまま復活するだろう。

そして人間としての私は死んでいただろう。


世の中のトレンドは「許し」だという。

あなたは1人では無い。

あなたはあなたのままでいい。

あなたは価値ある人間だ。

そういったワードは、普通の人間にはやくそうになり得るが、ゾンビには致死の薬となる。

そもそも、自分はダメだと思っている人間が、あなたのままでいいなんて言葉を飲むこと自体自殺ではないか。


人間にならなければ。

ゾンビは焦るが、落ち着きもした。

書いていれば少しだけ人間になれる気がして。

知力のパラメーターが戻れば、きっと失われた魔法だって使えるはずだ。


はやく人間になりたい。

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