4. 美容院を変えられない


 たまにふと思うのです。


「私って美容院にとってめっちゃ優良顧客なんじゃね?」と。


 二ヶ月に一回は必ずカットしないと量が増えてやばいことになりますし、髪が伸びてきたらくせ毛を抑えるためにストレートパーマをかけますし、ストレートパーマをかけるとすぐに傷んでしまうのでトリートメントも一緒にお願いすることが多くて、


 なにより一度通いだした美容院から滅多に変えることがない。


 実家に暮らしていた時は周りに美容院がほとんどなかったので、そもそも周囲の女の子たちみんなだいたい同じ美容院に通ってましたが、大学で上京して新しい行きつけの美容院が見つかってからというもの、一年生の頃から卒業後も数年ずっと同じ美容院に通ってました。しかも社会人になってからは引越しして片道一時間クラスになってしまったにもかかわらず、です。


 その美容院が特別安いとか、美容師さんの腕がいいとか、はたまた美容師さんと仲が良いとかそういうわけではなく。


 単純に、自分のクセ毛を把握してくれている人にお願いしないと怖いからです。


 「自髪紹介」でも書きましたが、私のくせ毛はどちらかというと生え際や、表に出ない内側の毛の部分で根強いうねりがあるので、それを知らずに表層をカットして軽くしてしまった日にはくせ毛が元気よく「こんにちは!」するわけです。


 逆にクセ毛の特徴を知ってくれている美容師さんだと、「ここは重みを残してクセを抑える」「ストパーをかけるのはクセが強い根元だけにしましょう」「前髪の分け方はこうしたらクセが目立ちにくいから」「ドライヤーするときは安くてもいいのでヘアミルクをつけて」などいろいろ考えてくれるのでとてもやりやすいです。


 なのでできるだけ同じ美容院で、同じ担当の人についてもらうことにしています。


 ただ、つい先日、大学時代から通っていた美容院を卒業しました。


 それはドライヤー中のとある話題がきっかけで……。




美容師「最近ショックなことがありまして」


乙島「何があったんですか?」


美容師「ほら、漫●村あったじゃないですかぁ。僕そこで漫画めっちゃ読んでたんですけど、突然サイト見れなくなっちゃったから全然漫画読めなくなっちゃって。あ、でも最近別の漫画読めるサイト見つけたんですけど」


乙島「…………」




 なぜ私がその美容院を卒業してしまったか。


 私が一次創作をする立場であり、コンテンツとコンテンツ制作に関わるすべての人を愛する人間であることをご存知の皆様はすでに御察しのことでしょう。


 というわけで最近は近所の別の美容院に通い始めました。


 下手に趣味の話をするとお互いの価値観の相違が露呈することもありそうなので、天気の話とか近所のオススメの飲食店の話とか当たり障りのない話をするようにしています。


 長期の関係性を築くためにも、適度な距離感は大事。



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