第35話 王都防衛 竜と召喚士

「痛てて…… 流石にあの速度でドラゴンに体当たりするのは無茶だったなぁ~。地面に激突した衝撃で障壁が砕け散ったし」


 スキルで創造した音速飛行ソニックフライト魔法を使って20分程で王都に到着した俺は、今まさに騎士団や魔導隊たちを攻撃しようとしている水色がかったドラゴンに突撃して爆散させる事に成功したものの、その勢いのまま地面に激突してしまった。だが、障壁のお陰で殆んどダメージは無かった。


「さて…… 騎士団と魔導隊の皆大丈夫?」


「俺らは大丈夫だ。それよりもあっちの方で空竜スカイドラゴンと戦ってる奴らが居るんだが、戦況がかなり不利らしいからそっちの方に援軍頼む!」


「はい。了解!」


 そうして王城近辺に居る空竜の元に俺は飛んで行き、氷矢アイスアローを放つ。強烈な冷気を放ちながら飛んでいったその魔法は奴の翼に命中し凍りつかせ、奴の飛行能力と体力を削ぐことに成功した。


 しかし、奴は風の魔力を飛行の補助に使っているようで、戦闘能力は半分位削ぐことに成功したものの飛行能力についてはそれほど変化が無いように見えた。


「威力が足りなかったかな。よし、もう一度……」


 今度は先ほどの氷矢とは違い、落ち着いて全力の猛雪砲ブリザードカノンを叩き込む。先ほどより強烈な冷気により、奴は全身を凍りつかせて墜落した。それをチャンスと見た下の魔導隊の人たちが墜落したスカイドラゴンにこれでもかと火属性魔法を叩き込んで焼き尽くしていた。


 そうして今度は通常のドラゴンの方に向かって氷矢アイスアローを雨あられのように放つ。流石に1発当たった程度では死にはしなかったか、5~7発当たると流石にドラゴンと言えども耐えきれなかったようで、至るところが凍りつきながら墜落して死んでいった。


「さて、後16頭か……」


 逃げ惑う王都の民たちに火炎放射をしようとしたドラゴンを蒼氷剣アイヴァで斬りつけ、氷矢で撃ち抜く。魔導隊の雷属性魔法で追い詰められていた3頭に対しては猛雪砲を使用し、まとめて氷漬けにして墜とした。


 その隙を突かれて背後から竜の息吹ドラゴンブレスを2頭から同時に浴びせられた。火傷のダメージを受けてしまったものの、耐火性のある服を着ていた為か重傷までは行かなかった。


「お返しだよ!『闇氷の十字架カーシクルクロス』」


 融合して増幅した2属性のエネルギーが2頭のドラゴンを消滅させ、ついでに付近を飛行して獲物を見定めてたドラゴン1頭の片翼を消しとばした。翼を消されたドラゴンは墜落し、下に居た騎士団が魔法剣の滅多斬りで止めを刺していた。


 その後も軽いダメージを何回か貰ってしまったものの、30分後には殆んど問題なくドラゴンを全て討伐または消滅させる事が出来た。だが、その時物陰から3人の召喚士が出てきた。


「くそっ! 化け物め……『火竜召喚サモンフレアドラゴン』」


 彼らが力を合わせて唱えると、前方に巨大な魔方陣が出現してそこから巨大な赤い鱗を持つ火竜フレアドラゴンが2頭出現した。


「さあ、あの忌まわしき化け物を焼き尽くせ!!」


 召喚士たちがそう命令すると、2頭の口から猛烈な火竜の息吹が放たれてきた。この魔力を半分以上使った状態で弱点の火属性攻撃をまともに受ければ致命傷になりかねないので飛行して回避する。案の定、2頭の火竜も飛行してきて俺を追いかけてきた。


「っ! 速い!」


 巨体に似合わず物凄い速度でこちらに火炎弾を放ちながら向かって来た。回避不可能なほどの速度では無かった為、横に避けて背中が見えた所に猛雪砲を放つ。それは命中して効いてはいるものの、空竜の時よりは手応えが無い。やはり火属性の敵に対して、氷属性は相性が非常に良くなかったようだ。


 そして、今の俺の中途半端な攻撃により怒りに火がついた火竜は、こちらに向かって全力であろう火竜の息吹を放ってくる。それと同時にもう1頭の火竜が爆発する火球を大量にばら蒔いてきた。同時に対処するのはほぼ不可能な距離まで近づいてきたので、闇氷の十字架カーシクルクロスで火竜の息吹を相殺し、火球の軌道からとにかく逃げた。


「この状況を打破するには…… 氷属性最上級魔法しかないかも」


 そう思った俺は、その魔法を短縮形で唱え始める。


「かの者たちに、凍てつく零氷の力を……『零の氷獄フルゼロスプリズン』」


 火竜たちの居る場所の更に上から火すら打ち消してしまうほどの冷気と金属のような硬度を持ったとがっている氷柱を降らせる。それに翼や背中等を刺されて耐えきれず地面に落下する。更に落ちた火竜の周りに複数の尖った氷柱が着弾すると、その内側に強力な冷気の結界を展開して中に居る火竜の体力を削っていく。


 そして5分もすると完全に動かなくなり、無事に討ち取る事に成功した。そしてもう1頭の火竜も同様に対処して討ち取った。


「はぁ…… はぁ…… 魔力が残り少ない……」


 魔法創造スキルで音速飛行を創造し使用や最上級魔法の2回使用、それに加えてその他の高威力・高魔力魔法の多用により疲れが出始めてきた。動けなくなることを無視して魔法を使ったとしても、氷属性最上級魔法の3回が限界だろう。


 ひとまず蔓延はびこっていたドラゴン共は長時間の戦闘の後、全部討伐してドラゴンの魔の手から王都を守る事に成功した。


「かたじけない。ルナさん感謝致します」


「魔力反応が弱いですね。まあ、あれだけの激しい戦闘をすればそうなりますか…… ルナさん、最後のマナポーションです。飲んで魔力を回復させて下さい」


「ごめんね。ありがとう!」


 そうして渡されたポーションを飲み干した。その為、スキル使用による魔力消費以外の魔力分は全部回復した。しかし、これでも全力の60%位なので油断は禁物だ。そんな事を考えていると……


「ちっ! 火竜でも駄目とは本物の化け物だ。こうなったらあれをやるぞ!」


「えっ!? あれですか…… 分かりました」


 そうして彼らは10人同時にこう唱え始める。


「「「悠久の時を生きる古の風竜エトドラスよ、今この場にて姿を現せ!」」」


 そうして彼ら10人が全魔力を召喚に使い果たした結果、現れたのは物凄い威圧感を放つ風属性の巨大な竜だった。

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