第29話 いざ王の待つ城へ
「さて、これからどうする?」
「時間はたっぷりあるからじっくり考えよう…… あ、この芋と肉の料理美味しいなぁ」
「リニルシア、もう少し綺麗に食べれないの? 飛び散ってるんだけど」
「あ、ごめん。ユーラ」
大衆食堂バオラに行った俺たちは、昼食を食べたらどうするかを話し合っていた。町の観光をするか、またなんかギルドに依頼でも受けに行くか、それとも迷宮攻略にでも行くか等の案が出た。しかし、王都観光以外は最近やったことのある事ばかり。間隔を開けないと飽きてしまい、いざ重要な依頼を受けた時に身が入らなければ困ると言う結論に達し、観光を続ける事に決まった。
ひとまず頼んだ食事を食べきらないと帰りづらいので、残りの料理を全員で食べている。すると、入り口から店内に入ってくるいかにもエールテス王国の王族の格好をした見た目が推定12歳の少年と、付き添いの兵士2人に貫禄のある執事らしき格好をした人が1人入ってきた。
王族の人たちが来ることがあるこの大衆食堂には、専用の席が複数用意されている。椅子や机も座り心地が良いように最高級の素材が使われている。
だが、その少年はそんな居心地の良い席などまるで眼中にないようで、自分と同世代や多少上や下のの子供が居る場所に行ってはひたすら話し掛けている。友達が欲しいのだろうか。
「ルト様、あの席の場所に行きますよ」
「え? 何で?」
「ここには沢山の人が居ます。もしかするとルト様にろくでもない人間が近づいて来るやも知れないのです」
そう言って執事は俺たちを含む周囲の人たちまるで汚いゴミを見るような目で見回す。やはりそれに気分を悪くした人が多いのか、先ほどまでの喧騒が嘘のようにこの場が静まる。
「ろくでもない人? この食堂にそんな人居ないよ? むしろ王族とか貴族の方がろくでもない人多いと思う。だから、僕はこの人たちと話してる方が楽しいもん。あと、ペルザンテじい。そのゴミを見るような目で皆を見るの止めて! 楽しくなくなる!」
「……」
推定12歳の少年とは思えない威圧感を放ちながら睨む。それに気圧されてペルザンテと言う爺さんは黙りこんでしまった。
「皆ごめんね」
貴族や王族以下は全員ゴミだと思っているペルザンテとは対照的に、身分関係なく話し掛けたりしている。貴族や王族にろくでもない人が多いと言っていたので、それ関係で嫌な思いでもしたのだろう。
そんな彼の発言もあり、雰囲気はすっかり元の賑やかな大衆食堂となった。俺たちの方にも来て冒険の話をしてと頼んできたので話したり、逆に向こう側も当たり障りのない話をしたりする事20分、満足したのか空いている席に座って出てきた料理を食べ始めた。それを見た俺たちは、料金を払って店を出た。
「いやぁ美味かった。機会があればまた来たいね」
「ああ、そうだな」
「それにしても途中で入ってきたあの子、王族って感じの格好をしてたけどこの国の王子なのかな?」
「そうじゃないの? 付き添いの兵士がエールテス王国の国旗が入った帽子を被ってて、彼の着ている服に王家の紋章が入ってるし」
「執事とは違っていわゆる『平民』を見下すような態度は全くと言って良い程無かったし、むしろ暮らしなどに興味がある純粋な目をしていたからな。あの子が次の王になればこの国は安泰だろう」
その後は王都をのんびり歩きつつ、気になった店や場所があればそこに行って商品を買ったり、その場に居た王都の住人に色々話を聞いたりした。途中、話していた婆さんの荷物をひったくって逃げてく馬鹿な泥棒が出て、それを
そうして、偶然空きがあった王都高級宿の部屋の予約を1泊2日で取ることが出来た。たまには高級指向の宿にでも泊まるのも良いだろうと思って予約を取ったルスマスだったが、4人全員で金貨50枚が必要と言うルスマスの想像を超えた金額に愕然としていた。
が、まだこちらの冒険の旅に使える資金は白金貨2枚と金貨60枚ある。調子に乗って高級品を買わなければ1ヶ月~2ヶ月は持つだろう。
取り敢えず金銭の話し合いは終わりにして軽めの夕食を取り、風呂に入った後にベッドに直行して眠りについた。
そして翌日、いつものようにユーラに起こされて、朝食を取ろうと皆の待つ食堂に行こうとしたその時、宿のスタッフが扉をノックして入ってきた。
「失礼します。あの、お客様に国王様がお会いになりたいとの事で兵士の方々がお見えになっています。何でも、盗賊団を全員捕まえた褒美を取らす為との事らしいです」
マジか…… とうとう俺たちの存在が王の耳に入ってしまったと言う事だろう。恐らく褒美を取らすと言うのは本当だろうが、そのついでにイーゼンセン帝国と戦えとかエールテス王国軍に入れとか言い出しそうな気がする。本音を言えば行きたくないが、断ればそれはそれで面倒臭い事態になるのは想像しやすい。
色々考えたその結果、取り敢えず行ってみる事にした。そして、下で朝食を取っていたルスマスとリニルシアと共に兵士に付いていく事15分、遠目で見えていた王城リディエに到着した。門をくぐり、城の入り口の扉を開き、豪華な装飾と絵画が飾られている廊下を通る。そして、真っ直ぐ歩き続けて重厚な扉の前に到着した。ここが、謁見の間だろう。
「失礼します、エルテス2世様。目的の方々をお連れしました」
兵士がそう言い、扉を開ける。するとそこには、玉座に腰掛けた見た目50~60位の男の人が居た。
「よくぞ来られた。我はエルテス2世、この国を治めし王だ。
「どうもありがとうございます。ところで何故私の名前を知っているのですか?」
「ああ、昨日ここに来たアテン商団の団長から聞いた」
成る程。アテンが俺の事をエルテス2世に話して、そこからギルドに聞く等情報収集を行った結果場所を突き止めて俺を呼んだと言う事か。だとしたらルスマスたちも一緒に呼んだのは何故だろう。おまけでなのか、それとも戦に役立てる為の駒として呼んだのか全く分からない。
王の意図が全く読めないので、警戒して身構えている。だが、いくら時間が経とうとも何もしてくる事は無く、褒美も受け取れた。これで用事が全て終わったので兵士の案内で城を出ようとした時、何かしら不快な魔力を放つ存在を感知した。それと同時に俺は叫んでいた。
「エルテス様、しゃがんで!」
俺が急に大声を出したのでエルテス2世は驚くも、しゃがんでくれた。するとその直ぐ後、エルテス2世の頭上に光の線が走る。外れた光線は城の壁を貫通して消えていった。
「何者だ! 我を殺ろうとした者、さっさと出てこい!」
エルテス2世が怒気を放ちつつそう叫ぶと、彼の背後の割れた窓から
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