第27話 王都ルテス観光
「冒険団の皆様、ありがとうございました。大量の飛竜に襲われる等の出来事もありましたが、皆様のお陰で荷物にも殆んど損害が無く無事に王都までたどり着くことが出来ました! 今回の報酬については王都のギルドに預けてあるので、受け取りはそちらでお願い致します!」
アテン商団の副団長ルシアナによる挨拶が済むと、冒険団の皆は思い思いに都のあちこちに散らばって行った。
「おーい。ルスマス、これからどうすんだ?」
「王都に来てからの予定か? 考えてねぇな。まあ、無難に観光でもするかな。てか、そう言うゼナたちはどうするんだ?」
「俺たちか? 団員の1人がSランク昇格試験を受けるから、その間はここに居るぞ。その後はまた依頼でも受けるかな」
「そうか。またしばらく会えなくなるな」
「だな。でも、冒険団続けてりゃいつかは会うだろ」
こうしてエーシェ冒険団とも別れた俺たちは、まず先にギルドに報酬を受け取りに行く事にした。冒険団1つにつき白金貨1枚の固定報酬に加え、クレット盗賊団を多数捕らえて警備隊に引き渡した際の報酬も加わって、合計白金貨3枚と金貨16枚と言う多量の報酬を得ることが出来た。
それに加えて俺のランクもDへ上がり、他3人もSランクに一歩近づくことが出来た上、高ランク冒険団にルスマス冒険団と言う名前を印象づけられたので、今回の依頼で得たものはかなり大きかった。
報酬受け取りも終わり、ギルドから出た時にルスマスが提案をしてきた。
「商団護衛も終わった事だし、せっかく王都に来たんだ。休息を兼ねて観光しようと思うが、どうだ?」
「確かに、時間を気にせず気の済むまでのんびり過ごすのも僕は良いと思うよ」
「私も良いと思う!」
「私も良いと思います」
皆の意見が一致したので、王都の観光をすることになった。だが、この街に来るのはルスマスたちも俺と同じで初めてだったようで、どこに何があるのかなど全くと言って良い程知らなかったが、取り敢えず街を歩きながら気になった所に入ってみようと言うことになった。
「それにしてもエールテス王国の中枢である王都だけあって人が多いな。色々な地方や国の旅人や商人たちが商売してたりして活気に溢れてるし」
「本当だよね。でも最近はイーゼンセン帝国と仲が悪いから、税金が高くなったり半ば強引に民を軍隊に入れるとか、酷い時なんか冒険団丸ごと引き込もうとするとか色々悪い噂が立ってるみたいだしね。さっき誰かがそう話しているのを聞いたんだ」
「そうなの? それじゃあ早く私たちもこの国から出た方が良くない?」
「まあ、あくまでも
リニルシアが言ったことに若干の不安を覚えたが、その後言われた事を聞いて、確かに冒険団を強制的に引き入れようとする噂が本当ならこんなに多くの冒険団の人たちが来るわけないだろうと思ったので、抱いていた不安はすぐに消え去った。
そんな感じで街の景色を楽しみながら何か面白そうな所は無いかと皆で探していると、『マゼカル魔導具・武具店』と言う見た感じかなり広そうな魔導具と武具を扱っている店が目に入ってきた。そう言えば魔導具と言う物を俺は殆んど見たことはない。見たことあるのと言えばせいぜいルスマスの魔法のバッグとマジックテント位である。そう思ったら入ってみたいと言う欲望が出てきたので、ルスマスに聞いてみる。
「ねえ、この店に入って見たいんだけど良い?」
「何だルナ。興味があるのか?」
「うん! 凄く興味ある!」
「よし分かった。じゃあ入るぞ…… とその前にリニルシア。いくら金があるとはいえ、あまり沢山の魔導具を買うなよ。もし使いきれない程買ったらそうだな…… 最低限必要な分以外食事禁止な」
「……はい」
そんなやり取りをしながら店の中に入ると、そこには俺の知らない魔導具が辺り一面にびっしりと並べられている光景が見えた。隣のリニルシアは、美味い食べ物を食べた時のようなにやけ顔をしている。
店内は見た感じかなり広く、下手すれば迷子になりそうな位である。その為か、店員から店内の詳細な地図が入店者全員に配られた。更に小さな子供にも読みやすい案内板が天井や棚等にちらほら設置されている。地図を落として無くした人たちの為だろうか。
「迷子対策にこれでもかってくらい力を入れてるな。この店」
「それのお陰で迷ったりする人が大幅に減ってるらしいよ。このサービスをやる前は結構居たみたいだし」
地図を見ながら農業用魔導具コーナーを抜け、魔導武具コーナーに入って武具を見た瞬間、これはかなりの品質の物だと思った。魔導武具に
そんな感じで見て回っていると、20~30m程前の少し開けた場所でいかにも荒くれ者という感じの男の人と、凄い重たそうな鎧を着た女の人が互いに剣を構えて怒鳴りあっているのが見えた。このままだと喧嘩がヒートアップして殺し合いにでも発展してしまうのは明らかだ。
「どうする? 仲裁に入った方が良さそうか?」
「良さそうだと思う。周りに他の人が沢山居るし」
「分かった。行くぞ」
そうして喧嘩を止めようと、俺たちが行こうとした時男の人の方が突然持っていたナイフを女の人の方に投げるという行動をした。だがそのナイフは女の人に当たることなく、俺の方に炎を纏って高速で飛んで来た。
「『魔力の障衣』……痛っ!」
だが、ユーラがそれを見た瞬間、ナイフを投げた男に向けて持っていた弓+空中に6つもの弓を出現させて技を発動させた。
「よくも…… よくも…… ルナに傷をつけたなぁ!!! 『
風を纏った6本の矢は寸分違わず男の人の腕や脚に命中し、
「あ、ナイフを引っこ抜かないと…… くっ! あぁぁ!!」
強い痛みに慣れていないので正直抵抗があったが、刺さったままになっていたナイフをそのままにしておくわけにはいかないので気合いで引っこ抜き、上級回復魔法の『
その後、俺たち全員で店員に謝罪、壊れた棚を修復した。その棚にあった魔道具は壊れた物も含めて全て買い取った。
そうして後始末が済んだ後、この場を立ち去ろうとした時に鎧を着た女の人が話しかけてきた。
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