第24話 厄介者の断罪

「え、本当なの!? 貴女が吸血鬼だなんて……」


「うん。その証拠を見せるよ…… って言いたい所だけど、ここじゃ目立ちすぎて無理なんだよね」


 あの後、学園内備え付けのレストランでエリートクラス1組の人たちと一緒に昼食を取っていた時、2組のルアノと言う身なりのいい少女に一緒に食べないかと誘われたので、彼女の隣へ行くことを1組の人たちに告げてから誘いに乗っていた。


 何故かルアノの隣には2組の生徒がのが不思議でたまらなかった。それに、時折周りから今まで感じた事のない俺への哀れみの視線を感じたが、特に気にせず彼女との会話を楽しみつつ昼食を取っていた。


 昼食を取り終えた後に、この学園内の散歩にも誘われた。断る理由は無いし、まだ休み時間も40分近く残っているので了承した。ルアノの案内されながら思ったのは、初めてここに来る人や新入生は1人でウロウロすれば迷ってしまいそうだと言うことである。


 そんな感じで綺麗な花たちが咲き乱れる花壇スペースを歩いていると、後ろから泥水を誰かに掛けられる。


「ゲホッゲホッ……何これ、泥水じゃん」


「ペッ! 口の中に泥水入った、最悪……」


 突然の事態に意表を突かれたものの、この泥水を掛けた犯人を確認する為に後ろを振り向くとそこにはこの学園の生徒5人が立っていた。たちの悪いイタズラなのだろうか。


「『ウォッシャー』『ドライズ』! ねえ、君たち。何でいきなり泥水を掛けてくるの? 」


 服に付いた泥水による汚れを洗浄魔法で浄化し、若干の臭い匂いは消臭魔法で消した。


「嘘だろ!? 汚れが一瞬で…… こんな魔法があるとは……」


 俺の創造した洗浄と消臭魔法にたいそう驚いているようだった。ルアノの方にも魔法を掛けようとして彼女の方を見ると、本能的に奴らに対して怯えていたのが見えた。それも、溢れるばかりの涙を流しながら。


 ただ事ではないのは明らかなので、何があったのかを聞きたいと思った。だが何故か、それを聞いてはいけないような気がした。そんな事を思っていると……


「おいそこのガキ、何故その屑入れと楽しそうに会話している? 今すぐやめろ! 俺様の命令が聞けんのか?」


「え?」


 何を唐突に言い出したかと思えばルアノの事を屑入れ呼ばわりしたあげく、俺に対して命令口調で糞みたいな指示をしてきた。ここから導き出される結論は1つ、ルアノはコイツらに胸糞悪い『いじめ』と言う名の犯罪行為の対象とされているのだろう。


 だからか、2組の生徒たちがルアノに近寄ろうともしなかったのは。この5人組の集団に何らかの脅しを受けているのかもしれないと、そう信じたい。


「嫌だ。何でそんな事言われなきゃいけないの? 君たちのやっていることは犯罪だよ」


「知るかよお前の都合なんざ! そんな事より、エリートクラスの生徒だったら俺の命令に従えるはずだよなぁ? 逆らえば俺様の家の力でお前たちを破滅されることなど楽勝だぞ?」


 あ、駄目だこりゃ。一回精神的に殺らないと治らないだろうな。殺っても治る保証はないが、俺自身見ていてはらわたがが煮えくり返るのが分かっていたのでとある創造した魔法を放つ。


「魂に刻み込まれし恐怖を味わって苦しめ……『恐魂縛キャードウルバインド』」


 魂の奥深くに特定の条件下で発動する恐怖を埋め込み、魔法を掛けた対象がその条件を達成すると、恐怖で精神に死なない程度にダメージを与える魔法を創造して、奴らに掛ける。ちなみにその条件は『ルアノに危害を加える、または加えようと行動を起こす』と言う風に設定しておいた。


「……ん? 何も起きないじゃないか」


「まあ、これで君たちはこの魔法が効果を発揮している間は今後一切ルアノに手出しできなくなったよ」


「ふざけんな! この――」


 そう言って真ん中に居る5人のリーダーらしき生徒がルアノに向かって『炎矢フレイムアロー』を放ったその時、突然彼が冷や汗を垂らしながら気絶して倒れた。放たれた炎矢は俺が掻き消しておいた。


「とまあ、こんな感じで理不尽に危害を加えようとするとそこに倒れてる誰かさんみたいになるから、今のうちに改心しておいた方がいいと思うよ? 完全に改心したら解除されるように調整しといたから」


 気絶してる生徒とその取り巻きを放置して、俺はルアノとの散歩の続きを始めた。お互いに自己紹介をして、他愛もない会話をしながら休み時間が終わるギリギリの時間まで一緒にいた。


 そして、ルアノと別れて闘技場に着いてすぐに授業開始のチャイムが鳴った。


「よーし! 続きを始める。戦いたい人は自由にあの4人の中から選んでくれ。いなければ俺が適当に決めるぞ」


 そうスファーが呼び掛けた所、来年この学園を卒業して王国魔導騎士団に入る事が決定しているというアドトムという18歳の少年が名乗りを上げ、更に俺を指名してきた。どうして俺を選んだのか聞いてみると、『貴女の奥深くに凄い力が眠っているのを感じたから』だと言う。魔力を極限まで抑えても

 感じとるその探知能力は凄い。


 そして、スファーの訓練開始の合図と同時にアドトムが剣に雷を纏わせ、斬り込んで来た為、早急に氷剣アイシクルソードを生成、彼と鍔迫り合いになった。


 そこで剣流つるぎながしかまえを使用し、斜め上に彼の剣を弾き飛ばす。が、すぐさま彼は雷爆発エクスサンダーと言う雷を周囲に撒き散らす上級魔法を使用してきた。至近距離で喰らった俺は、撒き散らされた雷と共に吹き飛ばされた。高い魔法防御力のお陰で持ちこたえるも、耐性が低い為そこそこのダメージを受けてしまう。


 雷爆発を警戒しつつこちらも上級魔法の猛雪砲ブリザードカノンを放ちながら氷剣で斬り込む。それが回避されると、すぐにもう一発猛雪砲をアドトムに放つ。今度は命中し、彼が氷結の状態異常になった所で訓練は終了した。


 その後、ルスマスとユーラも生徒たちとの訓練をやった。それを終えた後は俺が創造した洗浄魔法と消臭魔法を教えたり、教室に戻って今までの冒険で体験したことの話をする等をした。


 そうして3時間後に授業終了を知らせるチャイムが鳴ったので、スファーの元に行って書類に依頼達成のサインを貰い、ギルド受付に提出しに行った。








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