第20話 魔導師の集う町 フォレスタス
「はぁぁ……」
フォレスタスに着いた俺たちは、すぐに確保しておいた宿の部屋で今日を含め3日間何をするか考えていた。正直な所、俺は2日間ゼナとの手合わせ以外で外に出たくはない気持ちがある。だが、それと同等位に町の中を見て回りたい気持ちもある為、悩んでいた。
「どうしたの? ルナ? この町に来てから元気が無いけど」
「あ、うん。実はね……」
ルスマスたちと出会う前、この町の上空で魔法乱射したりしたせいで目立ち過ぎて、魔導防衛隊のバルツとシルバードの2人に『戦争の道具』として使われる為に捕縛されそうになり、それを拒否して殺しにかかられたので撃退した事を話した。すると、ユーラが『流星の弓矢』を引っ提げて立ち上がった。
「ユーラ、どこ行くんだ…… おいまさか」
「その通りです! ルナを戦争の道具として使おうとして、それが達成出来ないと分かれば殺そうとする、そんな2人なんか居なくなればいい!!」
ルスマス程の高ランク冒険者ですら怖じ気づく程の強烈な殺気を放ちながら2人を殺ろうと外に行こうとしたユーラ。早く止めないと大変なことになるのは明らかなので、後ろから駆け寄って抱きついた。
「ユーラ、落ち着いて! お願い……」
「…………っ! ごめんね、ルナ。話を聞いてたら怒りが沸き上がって来てつい……」
何とか落ち着いてくれたようで、最悪の事態は回避された。そうして改めてフォレスタス滞在中の行動について話し合いを行った結果、基本自由行動と言うことに決まった。ただ、俺が出歩く際には必ずユーラが一緒についていくことになった。本人が強く希望したのと、ルスマスが『お前を守る事に関してはユーラ程の適任者は居ねぇよ』と推したのが理由だ。
そうして話し合いを終えると、ユーラがまたどこかに行こうとして立ち上がり、こう言ってきた。
「じゃあルナ、ちょっと待ってて。今魔導書買いに行ってくるから、そしたら一緒に町の中を歩こうね!」
「うん!」
流星の弓矢はちゃんとしまい、普通の弓矢を引っ提げて魔導書を買いに外に行ったユーラ。そうして待つこと1時間後、魔導書を3冊持って戻ってきた。
「お待たせ! ルナ。これを読んで魔法覚えれば外を出歩けるよ!」
渡された魔導書を見てみると、1冊目は『基本魔導書~攻撃~』で2冊目は『基本魔導書~防御~』3冊目は『基本魔導書~その他~』と言うタイトルのようだ。試しに1冊目をめくってみると、そこにはこの世界のあらゆる初級から上級の魔法がびっしり書かれていた。他の2冊も同様にびっしり書かれていた。
そしてその中から有用だと思った『
だがどうしても火や雷、光属性の魔法はどうあがいても会得することは出来なかった。ギルドカードを使ってスキル効果を詳しく見てみると、闇氷の女王スキルのマイナス効果の1つに『火・雷・光属性の魔法はいかなる手段を使用しても会得は不可能』との記述があった。
(ああ、成る程な。道理で……)
その後、その3属性以外の初級~上級魔法会得の練習を重ねて、ある程度使いこなせるようになった時にはもう夜になっていた。なので、魔法練習をおしまいにし、結界を張って部屋が壊れないようにしてくれていたリニルシアに感謝を述べた。
「リニルシア、ありがとうね!」
「僕が役に立って良かったよ。ただ、今度やる時があれば威力はもうちょっと抑えてね」
「うん。ごめんね」
フォレスタスに安心して出歩けるようになるための魔法練習を終えた後は、俺たちと一緒の宿に泊まっていた他の冒険団の人たちと共に宿の食堂で夕食を取り、風呂に入った後すぐにベッドに寝転がる。
こうして、到着してから俺が魔法練習をしただけで1日目は終わった。そして次の日の朝……
「ルナ、起きた? そう言えばさっきゼナが来て『今からギルド裏の練習場で手合わせお願い出来るか聞いてくれ』って言われたんだけど、行く?」
「うん。約束だし、行くよ。『容姿偽装』!!」
昨日町に着いてから、様になるまでずっと練習していてようやく元の姿が分からなくなる程にまで上達したこの魔法を今使用した。果たして今日も上手く偽装出来ているか……
全身を包み込んでいた光が晴れる。するとそこには銀髪と黄緑の瞳を持ち、本来の姿よりも身長がほんの少し縮んだ推定7~8歳の幼女が居た。ユーラの子供と言う設定の為、容姿も若干ユーラ寄りにした。上手く行ったようで良かった。
「……こうして見ると、本当にルナとユーラが親子のように見えてくるな」
「僕から見てもそう見えるね。これなら仮に見られても大丈夫だと思う。変化前のルナとは結構違うし」
2人からお墨付きをもらった。これならユーラと一緒に目立たないようにすれば大丈夫だろう。
そして、出発の準備を整えてからフォレスタスギルド支部に向けて出発した。30分程歩き、ようやくギルド支部に到着したので中に入っていった。
魔導防衛隊の訓練が一段落した俺らは、1時間の休憩時間を利用してホーリア鉱についての情報収集、例の吸血鬼の行方を調査していた所、ティアネイドに逃げていた事が分かったものの、そこでエシュテールと言う変態貴族に絡まれてからの足取りが掴めていなかった。
「あぁぁ…… まさかティアネイドまで逃げて居たとはね、あの吸血鬼」
「捕縛ないし討伐しようとしたんだからな。奴は自身を守る為でさえ殺しをしない性格だったから、俺らがまた来てはたまらんと静穏を求めて逃げを選んだのだろう」
「そう言えばエシュテールって貴族があのシャルナって吸血鬼に喧嘩売ったらしいけど、どうなったかバルツ君は知ってる?」
「ああ、俺が世話になってる情報屋によると、何でも奴の氷属性奥義魔法で全員死にかけたらしい。エーシェ冒険団の妨害が無くなった瞬間エシュテールお抱えの魔導師とその部下が急いで駆けつけて治療魔法を施したみたいだが、当分動けないらしい」
「全員相手にして余裕ね…… ホーリア鉱も入手の目処すら立たないし、現状シャルナをどうこう出来そうにはないし、そもそも居場所が分からないという問題が……」
「まあ、のんびり行こうや」
そう言って肉を食いながら休憩時間を満喫していると、この場所に明らかに俺から見て釣り合っていない2人の親子が入ってきた。子供の方に至ってはまだ10歳に満たない幼女に見えた。
(何だか子供の方に見覚えがあるような? いや、気のせいか)
何をしに来たのか気になったので見ていると、エーシェ冒険団のゼナという人物と共に練習場に続く裏口から出て行ったのを見た。
「バルツ君、どうしたの?」
「ああ。実はな、例の吸血鬼に似ている幼女が練習場に入ってくのを見たんだ。推定7歳程のな。姿形も魔力も違うのに何故か凄い気になるんだよな」
「ふーん。そんなに気になるなら練習がてら見に行きましょうか?」
「ああ、そうしよう。もし奴だとしたらこの糞面倒な仕事も終わりにぐっと近づくだろうしな」
こうして、俺らは幼女が例の吸血鬼と同一人物なのかを確認する為に練習場に向かうことにした。
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