第19話 急襲! 飛竜と凍飛竜
眠ってからしばらく経った時、1人の男が俺たちのテントに駆け込んできた。
「大変です! 起きてください!」
「……んあ? どうした?」
「
一体何だと思ったら、周囲を監視していた冒険団がこちらに接近する飛竜と、その亜種である凍飛竜が大群をなして襲来してきたという。もう既に戦闘は始まっているが、見回りの冒険団だけでは戦力的に不足している為、寝ている全冒険団を起こしてでも対処しなければならない事態となったらしい。
「成る程、了解した。俺たちも今すぐ行くぞ!」
「「「了解!!」」」
急いで出撃準備をしてテントから出ると、驚きの光景が広がっていた。見える範囲だけでも10頭以上の飛竜と凍飛竜が上空を飛んでいた。『
「はぁ!? 合計41頭とか何それ多すぎんだろ!」
敵のあまりの多さに悪態をつくルスマスだが、すぐに冷静になる。
「悪態ついてても仕方ねぇな。ルナ、お前1人で凍飛竜片付けられそうか? 今は全力発揮可能な夜中だし、それにアイツの属性的にルナとの相性は抜群だろうが」
実際凍飛竜がどんな奴なのか分からないが、氷属性なら俺には全く効かないどころか回復してしまう程相性は良い。物理攻撃を無防備でまともに喰らわなければ大丈夫だと判断した。
「多分大丈夫。仮に危なくなったら逃げてくるから」
「そうか、無理すんなよ。よし、俺たちは商団長の所に行ってそこに来る飛竜共を討伐するぞ!」
「了解だよルスマス!」
「分かりましたルスマス。ルナ、無理しないでね。危なくなったら逃げて」
「うん。気を付ける」
地上から狙い撃ちにでもしようかと思ったが、木々が邪魔をして見えにくい。完全探索スキルを使いっぱなしにしたら魔力の消費が激しく、肝心なときに魔力切れなんてこともあるかもしれない。なので、背中に収納していた羽を展開、今まさに俺たちを襲おうとした上空の凍飛竜の元へ向かう。ブレスを吐いてきたが、
「は~い。凍飛竜さん。私たちを襲うのであれば容赦はしないよ!」
1番近くに居た奴に向けて創造した魔法を唱え始めた。
「闇の雷よ、その絶大なる呪の力を持って我が敵を葬れ……『
そう俺が唱えると、奴の周囲に小規模魔方陣が4つ展開し、そこから同時に濃い紫色の闇属性の雷が同時に
「さあ、どうするの? 襲ってくる奴はさっきの奴のようになるけど?」
羽を最大まで広げて魔力と殺気を開放して飛竜や凍飛竜を威圧すると、3分の2は巣に逃げていった。だが残りの3分の1は威圧が効かなかったのか、俺に向かって襲撃してきた。
「向かって来るのか。なら仕方ないね…… 『
全てを切り裂く圧倒的な数の風刃は、向かって来た3頭をメッタ斬りにして撃墜した。魔法詠唱中に接近してブレスを放ってきた奴は、撃たせた後に側頭部に闇を纏った蹴りを御見舞いして葬った。すると、2頭が普通の飛竜に対処中のルスマスたちを襲おうとしたのが見えた。
「皆が危ない! 『
闇と氷の融合により増幅した2つの属性の力は、2頭の凍飛竜を跡形も無く消し飛ばして今まさにルスマスたちに攻撃を加えようと上空でブレスを放とうとした飛竜も巻き添えにして消滅させた。相手が氷属性なのに氷属性を含む魔法を放ってしまったが、闇属性の方で消し飛ばせたので良しとしよう。
「ルスマス、大丈夫? 怪我はない?」
「ああ。この通り、傷1つ無いぞ。他の皆も大丈夫だ」
亜種を含む合計3頭の飛竜を葬った後、ルスマスたちの元に降下した。彼らから近めの距離で闇氷の十字架を唱えた影響が出て居ないかどうかを確認したが、特に影響は無かったようで良かった。
「ルスマス、あれが彼女の本当の力なのか?」
「ああ。ルナが本気を出せば飛竜とその亜種程度なんか、俺らがスライムを相手にするようなもんだ。地竜の迷宮のカースジェヌラも高威力風魔法で一撃だったしな」
「えぇぇ…… じゃあ俺がどう足掻こうが勝てんとお前があの時言ったのは本当だったのか…… よし! 決めた! シャルナ嬢、今度また手合わせをしてくれないか。君と戦うとどんどん強くなれそうだ」
「次の町について少し休んだ後で良ければ付き合うよ、ゼナ!」
「おぉ! そうか、そうしてもらえるとありがたい」
と言う事で次の町に着いて、少し休憩してからゼナとの手合わせをすることになったが、何だか肝心な事を忘れているような気がした。
(待てよ、確か次の町って…… あ! 思い出した、フォレスタスじゃねぇか!)
転生初日にそこの防衛隊であるバルツとシルバードの2人とやり合った記憶が
(フォレスタスではゼナとの約束以外であまり出歩かない方がいいな。あの2人に見つかったら面倒臭い事態になるのは確定だし)
そんな事を考えていると、ルスマスが『まだ襲ってくる飛竜が居るからソイツら片付けるぞ!』と言ってきたので皆と一緒に飛竜の討伐に動き始めた。
その途中で虎系獣人戦士のクグラが、こちらに突撃してくる3頭の飛竜を『そんな骨のような竜モドキなんぞ、俺の敵ではなぁーーい!!』と叫びながら持っていた巨大な斧を横に振り、まとめて真っ二つにした。勢い余ってデカイ木まで真っ二つになっていた。この現象が純粋なパワーのみで引き起こされているらしい。物凄い破壊力である。
そんなクグラ無双と皆の活躍のお陰でたったの10分で全ての飛竜を討ち取る事が出来、商団と冒険団たちの安全が確保されたその時……
「冒険団の皆様、ありがとうございます! しかし、また襲ってくる可能性が無いとは限りません。寝不足ではあると思いますが、早くここを出ましょう」
俺たちを呼びに来た男がそう呼び掛ける。確かにまた飛竜共が襲ってくる可能性が無いとは言えないだろう。皆それを理解しているようで、この呼び掛けに応じない者は1人たりとも出ることは無かった。
寝る時間を犠牲にして、皆の協力も得て急いだお陰でルトレーバを出発してから1日半後の昼過ぎと言う想定以上の早さでフォレスタスの町に、負傷した人は出たものの、死んだ人は1人も出ず無事に到着することが出来た。
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