第14話 グラデルシア捜索

「ここがグラデルシアか……」


 迷宮の入り口の見た目は地味なただの洞窟だが、その奥深くから魔力の奔流ほんりゅうを感じる。それが、この迷宮は危険であることを教えてくれる。


「緊張してきましたね。エーシェ冒険団でさえ手こずったと言うこの迷宮、例え地下1階でも油断は出来ませんね」


「そうだな。だが、前までとは違ってルナも居る。暗所でも目が見え、なおかつ完全探索パーフェクトサーチスキルを持っている。これ程心強い仲間が居るのはありがたい。ルナ、俺たちと来てくれてありがとうな」


「へへ、どういたしまして。私は、ルスマスたちに付いてって良かったと思ってる。だって、みんなと冒険するのは楽しいもん!」


 そんな会話をしつつ地下へ進む階段を降りて行くと、大部屋に出た。そこに集団でいきなりオークやスライム、名前は分からないが、大きめの蝙蝠こうもりの大群まで様々な魔物が周囲に出現した。

 

「いきなり魔召エリアに出るとはついてねぇ。おまけにマテリアルバットまで居やがる」


「マテリアルバットってあのデカイ蝙蝠の事?」


「ああ、そうだ」


 ルスマスによると、あのAランクのマテリアルバットと言う蝙蝠は物理攻撃が全く効かず、魔導師や精霊術士が居なければ倒すことが出来ない物理攻撃職の人たち泣かせの魔物らしい。そんな厄介な奴が迷宮に入った途端とたんに出てくるとは。流石攻略推奨Aランク以上の迷宮だな。


 とにかく俺とリニルシアで蝙蝠の大群を魔法で片付けて、その他大勢の魔物はユーラとリニルシアで片付ける。そうして役割分担をして魔物を討伐して魔召エリアを無事突破、地下2階へ降りる階段が出現したのでそこを下りていく。


 幸いにも地下2階からは普通の洞窟系迷宮だったので、たまに奥深くに進む階段が見つからない時に完全探索スキルを使えば特に苦労することもなく地下15階まで進む事が出来た。幸いにも次の階への階段を直ぐに見つける事が出来たので進もうとすると、目の前を火の玉が通過した。その後直ぐに右側の通路から杖をもった骸骨と、目の前の壁を破壊してゴツい鬼のような魔物が現れた。


「くっ! スケルトンメイジとギガントオーガがそれぞれ6体だと!?」


「ユーラ、アイツらどれだけ不味い相手なの?」


 説明によると、スケルトンメイジは闇と土、水属性の上級魔法までを操る魔力を持つ骸骨で、物理攻撃と光や火属性に弱いが、魔法攻撃と闇や氷属性に強い。


 ギガントオーガは、3m近い体格で鬼の風貌に似ている。見た目通り力が非常に強く、人間をまるで石ころのように扱うほどらしい。風や土属性は全く効かず、その分火属性に非常に弱い。それぞれAランクの魔物である。


「確かに不味いね。じゃあ私はギガントオーガの方を相手するから他の皆はスケルトンメイジの方をお願い!」


「「「任せとけ!」」」


 こうして皆に骸骨の方を任せ、俺は鬼に似てる方を相手する。氷剣アイシクルソードを生成、二刀流で向かう。


「さあ、オーガさんたち。今から行くよ!」


 身体能力を活用、超高速でギガントオーガの1体に接近し、氷剣で切りつける。回避行動を取られて狙いがそれるも、相手の腕を斬った。


 続けざまに別の奴に急接近、斜め下から斬り上げて両断する。その隙を突かれて2体同じに殴られるが、夜になって力が増大している俺の敵ではない。殴ってきた腕をそれぞれ掴んでへし折った後蹴り飛ばし、そこへ氷剣を大量生産して奴らに飛ばしてメッタ斬りにした。


 こう言った事を繰り返し、ギガントオーガを全滅させた。ルスマスたちの方を見ると、リニルシアが『日光の雨サン・ライトレイン』と言う光の雨を広範囲に降らせる魔法で牽制し、その隙にルスマスが土属性を纏った剣『グランバスタード』で、ユーラが火と土の力を融合させた『流星のシューティングスター弓矢アロー』を使い、的確に敵を殲滅していた。


 そして、ギガントオーガの討伐を終えた俺も参戦し、数分も経つと全ての敵を殲滅させることに成功した。


「まったく、地下15階でこのキツさとはな。行方不明者が居るとされる地下25~34階は一体どんな魔境なんだ……」


「それでも行くしかないよルスマス。僕だって結構辛いけど、頑張って行くからさ」


「確かに。早く行方不明者を見つけてあの2人を喜ばせてやんねぇとな」


 こうして俺たちは、改めて地下深くへ進み始める。その後は先ほどのような集団での襲撃や魔召エリアに遭遇することもなく、地下25階へ到達した。そこからは、行方不明者が居るかも知れないので完全探索スキルを定期探索モードに変えて、時間を掛けて探す。


 地下25~28階には居なかったので、さっさと地下29階へと進む。すると、今までとは違う雰囲気のエリアに出た。そして直ぐに、完全探索スキルがとある2人の反応を捉えた。


(名前は…… フーリャスとシェーン! 居た!)


「ルスマス! この階に2人居たよ! ここから700m程の所に、カースジェヌラ5体に囲まれてる」


「は!? 5体!? それはヤバいぞ! 急げ皆!」


 2人を発見した俺たちは、急いで彼らの元に向かった、





「フーリャス、大丈夫か!」


「何とかね。シェーンは大丈夫かい?」


「ああ。俺は大丈夫だが、ここに来る前炎獄鳥にパルスフレアをまともに受けただろ? その時に迷宮の変化にも対応した地図もろとも脱出アイテムが消し飛ばされたのが痛い……」


 攻略難度が鬼畜だとして有名なこの迷宮に俺たちは、娘に掛けられた呪いを解除するためのポーションの材料集めに来ていた。行きは迷宮仕様の地図のお陰で難なく行けたが、途中で襲ってきた炎獄鳥に地図を跡形もなく燃やされた。その上カースジェヌラの群れに襲われると言う地獄のような状況に追い込まれていた。


「確かに、それは痛いね。脱出アイテム製作をしようにもコイツらのせいでまともに製作出来ないし……」


「くそったれ! Sランクモンスター5体同時に相手とか鬼畜過ぎるだろ!」


 何とか死力を尽くして抵抗しているが、相手の数が多すぎる上に呪い効果によってだんだん力が出なくなってきている。1体の爪攻撃を弾いた後、遂に体勢が崩れてしまい、その隙を突かれてしまった。


(もう終わりか……)


 そう思ったその時、目の前のカースジェヌラが突然、上空から飛んできた風の刃にメッタ斬りにされて絶命した。起こった事に絶句しつつ、上を見ると、そこには美しき黒い羽を羽ばたかせて飛んでいた蒼き瞳の少女が見えた。

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