第7話 冒険団への仲間入り
「ユーラありがとう……」
「どういたしまして。服の着方、大丈夫?」
「うん。何とかなりそう」
全焼した服に代わり、ユーラが買ってきたいかにも魔法使いって感じの帽子と服を貰って着た。下着も全焼したのだが、当然女性用の下着など前世では着たことなど無い。その為、それらも全てユーラに任せっぱなしである。
「よし、終わった」
「うん。バッチリ着れてるね! それにしても、今まで着替えたことなかったなんて信じられないよ。初めて会ったときだって臭いとか汚れとかなかったから」
「まあ、ユーラたちに会うまでの数十年間全部魔法で身だしなみは整えてたし、着替える必要がなかったからね」
「成る程それなら納得。それで、身だしなみの魔法って例えばどんな?」
「消臭魔法とか、洗浄魔法だよ。これ使えば服の汚れとかも全部取れるからね」
(まあ、今から作るんだけどね)
そう言って俺は女神から貰った『
「じゃあ試しにユーラにかけてみてもいい?」
「勿論良いよ。私もそんな魔法聞いたことないから気になるし」
許可を貰ったので、効果を確かめるべく創造した2つの魔法を使ってみた。
「全ての汚れよ、消え去れ『ウォッシャー』」「不快な臭いは、全て消え去れ『ドライズ』」
魔方陣から出た浄化の力を秘めた水がユーラに降り注ぐと、彼女についていた土汚れや埃汚れ、汗汚れと言った物は消滅して綺麗になった。服などが濡れていないおまけ付きだ。続いて唱えた魔法の魔方陣からは、光の波動が放たれた。すると、ユーラだけでなくこの部屋の臭いも消滅した。
「ルナ凄いよ! 確かにこれなら着替えなくても大丈夫そうだね」
「えへへぇ~。ユーラに誉めて貰えてよかった~」
しっかり期待通りの効果を発揮してくれて助かった。ユーラにも褒められたのでこの魔法は大成功だろう。ただ、消費魔力が結構多かったのは予想外だった。
そうして着替えも終わったのでギルド内の休憩所で待っている2人の元へ行こうとしたら、他の更衣室を使っていた女性の何人かが、俺の使った魔法に興味が湧いたようで『今の魔法凄いです! 是非レクチャーを!!』とか『私にも教えてくれないですか?』と言ってきた。まあ、ただの生活系の魔法だしいいかと思ったので教えることになった。その結果、更に1時間近く経過してルスマスたちを待たせることになってしまった。
「ルスマスごめんなさい。ちょっと色々あって時間かかっちゃいました」
「いや、受けてるクエストとか無いから問題ない。それじゃ改めてルナの冒険者登録行こうか」
全員の付き添いのもと、ギルドの受付まで行く。
「すみません。ルナの冒険者登録をしたいのですが、お願い出来ますか?」
「はい。えっと…… そこの蒼い瞳の子ですか?」
「そうです」
「分かりました。それではルナさん、こちらの『
「分かりました」
言われた通りに手をかざすと、水晶が一瞬強い光を放つ。
「はい。終わりました。これが貴女のギルドカードです。ギルド内部の施設を無料使用したり、クエストを受けたりする際に必要となりますので紛失しないように気を付けてください。万が一紛失した場合は、再発行に金貨5枚が必要となります」
「ありがとうございます」
「あ、それと自身のスキル等を確認するには『ステータスオープン』と言えばカードの裏側から光が放射されるので、それを壁などに当てていただければ表示されます。30秒程経つか『ステータスクローズ』と言えば光が消えるのでご活用下さい」
この後も、ギルドのランク説明や禁止事項、降格・除名基準等の説明を受けたあと、登録は終了して晴れて無事に冒険者となった。
「みんな終わったよ~」
「お、とうとうルナも冒険者か。それで、早速ステータス見たいんだがいいか?」
「うん。いいよ。ステータスオープン」
そう言うと、カードの裏側から光が放射され始めた。それを試しにテーブルに当てて見てみると、それを見た自分を含めた全員が驚く。
シャルナ・ヴァーナイン 種族 吸血鬼
『ステータス』
攻撃力 A 防御力 A 魔法攻撃力 SS 魔法防御力 SS 素早さ S
『属性耐性』
火 E 水 SS 氷 SSS(全吸収) 土 ― 風 A 雷 D 光 E 闇 SSS(全吸収)
『状態異常耐性』
毒 A 麻痺 A 氷結 SSS 魔法封じ SS 睡眠 B 混乱 S
呪い SSS 即死 SS
『通常スキル』 日光防御 魔法創造 風魔法 水魔法 氷魔法 土魔法 闇魔法
『固有スキル』 始祖一族の守力 闇氷の女王
「こりゃ凄い。強力なスキルのパレードだな。魔法創造のスキルとかこの世界に数百人いるかいないかの超レアかつ強力なスキルじゃねぇか」
「固有スキルが2つもあるよ…… それも絶対に強いやつ」
「成る程ね。道理でルナの身だしなみの魔法を見たことも聞いたこともなかったわけか」
「身だしなみの魔法?」
「ええ。さっき着替えてる時に聞いたんだけど、ルナって私たちに会う前の数十年間一度も着替えとか湯浴みしたことないらしいよ」
「「マジかよ!?」」
ルスマスとリニルシアが同時に叫ぶ。まあ確かに見た目綺麗で臭いもない人が実は何十年も着替えも湯浴みもしたことありませんって言ったら驚きはするだろうが、そんなに叫ぶほどのことなのか。
「で、理由を聞いたら『身だしなみの魔法を使ってるからだよ』って言われたわけ。気になったから実際に使ってもらったらまあ、それが凄いのなんの。まず、洗浄魔法『ウォッシャー』で全部の汚れが蒸発して、次に消臭魔法『ドライズ』で私だけじゃなく更衣室全体の臭いがとれてね。これ凄くない!? 何日も湯浴みとか着替え出来ない時とか最高でしょ!?」
だんだん気分が高揚してきたのか、話す声が大きくなってきたユーラ。それにつれて周りの視線もどんどん集まっていった。これ以上変に目立つのは良くないので、止めに入る。
「ねえユーラ…… 恥ずかしいからもうやめて。皆が見てるよ……」
「それでね…… え? あ、ごめんねルナ。それにルスマス、リニルシア。つい熱くなっちゃった。後はえっと…… 皆様大騒ぎしてすみません」
顔を赤くしながら俺たちや周りの人たちに謝ったユーラ。
「俺らは気にしてねーぞ! つーかここはもともと騒ぐような場所だしな!」
「儂も気にしてないぞ! 賑やかなのは良いことだからな、ハハハ!!」
「ちょっとあんた。もうこれで10杯目だよ! いくら私らが酒に強い種族とはいえ、これ以上飲まれるとお金がなくなるからね! もう飲むのやめな!」
「ハッハ! そりゃ済まんな!」
ユーラが騒いだことは、ここが元々賑やかな場所とだけあって、特に気にしている人は居なかったようだ。
「では、改めてルナ。ルスマス冒険団にようこそ! これからもよろしくな!」
「うん!」
こうして、晴れて冒険者となった俺は、正式にルスマス冒険団の団員となった。
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