第4話 ルスマス冒険団との出会い
「眠い……」
昨日の来客との戦闘後、古塔の中でぐうたら過ごしていたら朝になってしまった。そして、その瞬間今まで感じなかった眠気を感じるようになった。
「吸血鬼が夜行性だから、朝になると眠くなるのかな?」
行動に支障のあるレベルの眠気ではないが、特にやることもないので寝るのに邪魔になる羽を収納して寝ることにした。
~森の古塔前~
昨日、たまたまこの森を通っていた俺達は、2人の人間と吸血鬼との戦闘を目撃、巻き込まれないように隠れて見ていた。その後、朝になるまで待って2人を撃退した吸血鬼を討伐し、魔力の結晶である魔導石や血液を得るために住みかであろう塔の前に来ていた。
「ここだよな…」
「そうだよルスマス。それにしてもユーラ、討伐はどう考えても僕は無理だと思う。相手はあの超髙魔力の吸血鬼だよ? 昨日の戦闘見たよね……」
「ええ。でも、吸血鬼を討伐した時に出る魔導石や血液は上級武具の製作・強化、一部魔道具製作の素材として有用なの。需要があるから売ればまとまったお金になるし、危険でも行く価値はあるでしょう?」
「まあそうだけどさ。だからってそんな危険な…… 他の魔物の素材を集めるとか、野生でなおかつ人を襲う僕らでも倒せそうな弱い奴を討伐すれば良いじゃん」
「髙魔力吸血鬼から出る魔導石や血液の方が上質だから高く売れるの。て言うか、こんな危険を冒すはめになったのは貴方のせいでしょう? リニルシア」
「……」
この前訪れたとある町でリニルシアが魔道具を無駄に買い込んだ挙げ句、困っている人に残金の大半を無断であげてしまったのだ。しかも、俺が後で住民に聞いた所、実はその困っている人が詐欺師だったという事実が判明したのだ。
「まあ、過ぎたことは仕方ないだろ。それとリニルシア、お前しばらく飯減らすからな」
「そんなぁ……」
「これで2度目だぞ。普通ならパーティー追放だからな。これぐらい我慢しろよ。じゃあ塔の中に入るぞ」
そうして塔の中に入ると、吸血鬼が居る塔の為か明かりが全く無いのでまともな行動が出来ない。
「真っ暗ですね…… リニルシア。お願いします」
「はーい。闇を照らせ『
リニルシアがそう唱えると、輝く光球が数個出現して真っ暗な塔を明かるく照らす。
「これで行動しやすくなったな。よし、一番上まで上るぞ」
「「「了解!」」」
そうして上り始めて3分後、塔の一番上まで到達した。
「いかにも吸血鬼が居そうな扉があるね……」
「いい? 音を立てないように静かに入りますよ……」
「開けるぞ……」
そうして扉を開けてみると、上ってくる時のホコリだらけの汚い所と違い、明るくて綺麗に掃除されている部屋があった。見渡してみると、その中のベッドの上で寝ているのを発見した。
「おい。ベッドの上で寝てるぞ」
「一応『魔力探知』のスキルで確認してみたけどこの人間違いなく吸血鬼だよ」
「これはチャンスです。ゆっくり近付きますよ……」
そうして3人で徐々に近づいていたその時、後ろを歩いていたユーラが何かに
「2人ともごめんなさい…… 大丈夫?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
「僕も大丈夫…… あ、奴が起きます!」
怪我は無かったが盛大に音を立ててしまった為、寝ていた吸血鬼を起こしてしまう。
~森の古塔 シャルナの自室~
ふかふかのベッドの上で気持ちよく寝ていた所、側で大きな音がしたため起きてしまった。一体何なんだと思い、後ろを見てみると何かに躓いて盛大に転んだであろう3人が居た。見るに相当手練れな冒険者だろう。取り敢えず一体誰なのか、色々と聞いてみることにした。
「……あなたたち一体誰なの? 昨日襲ってきた人の仲間?」
「いや、それは違う。確かにたまたま通りかかった時に近くに潜んで昨日の戦闘を見ていたけどな」
「じゃあこんなところまで何しにきたの?」
「それはお前を――」
「あぁぁぁぁ!!」
1人のリーダーらしき男の人が何か言おうとした瞬間、一番後ろにいた女の人が突然涙を流しながら叫びだし、俺にどういうわけか抱きついて来た。突然の事で動けないでいると……
「似てる…… 私の死んだ子供に…… ううっ」
そう抱きついて来た女の人が言っているのが聞こえた。
(成る程。容姿が死んでしまった大好きだった子供に似ていたからなのか)
理由が理由なので、しばらく好きにさせることにした。そして10分後、女の人はどうやら落ち着いたようだ。
「……ごめんなさいね。それでもしよければなんだけど、私達と一緒に旅をしない?」
「旅?」
「ええ。駄目?」
そんな悲しそうな顔をしながら頼まれたら断りづらい。そう思いつつ、このままここに居てもやることは無いから、この人達と一緒に冒険した方が楽しいだろうなぁとも思ったので、了承することに決めた。
「良いよ~」
「ありがとう!! リーダーこの子連れてっても良いですよね?」
「ユーラが構わないなら別に良いけど…… そもそも日光大丈夫なのか? 吸血鬼って日光に弱いって聞くが……」
「それなら大丈夫だよ~。私『日光防御』スキル持ってるから。心配してくれてありがとう。お兄ちゃん」
俺が子供口調でそう言うとリーダーは、顔を赤くしながら下を向いていた。それから少し沈黙した後、言葉を発する。
「じゃあ、出発しようか」
「ええ。そうね。リニルシア行きますよ」
「はーい。了解でーす」
こうして俺は、ルスマス冒険団のメンバーと共にこの世界を冒険することになった。
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