束縛

佐田 環

第1話 束縛

 僕は。迷惑を掛けてばかりだ。自分が嫌になってしまう。本当に嫌だ。色んな大人たち、も。「心配してるから」、とか「心配なんだよ」、「心配してるよ」、「心配だ」、「心配だからさ」、とかエトセトラエトセトラ。心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配、心配。ふう。やんなっちゃう。

 僕は悪い人間だ。呼吸をするように嘘を吐き、傷つけ、心配を掛けて、迷惑を掛けて、でも自分の間違いから逃げてばっかりで、そうやって生きている。美しく生きたいと、汚い所は見たくないと、そういうふうに、弱く、弱く生きている。本当は醜い、のに。

 僕の行動のせいで心配を掛けている。全て僕のせいだ。だから、こういうと身勝手だけど。僕なんて放っておけばいいのに、と思ってしまう。大丈夫だって、言っているのだし、強がりではなく事実大丈夫なんだ。申し訳なさすぎる。変人な、だけなんだ。迷惑を掛けたくなかった。だけど器用じゃなくて、周りに目を向けられていなくて、幼くて、未熟すぎて、子供すぎて、浅はかで、迷惑を掛けてしまう。死んじゃいそう。ほんとに死んじゃいそう。

 心配顔に、囲まれて。

 その後、情緒不安定になって、意味も無く泣いたり、意味も無く叫んだり、意味も無く笑ったり、罪悪感でいっぱいになって、息苦しくなって、そして疲れて、心臓がバクバクして、体の末端から血の気がスウウッと引いてゆき、目眩がして、クラクラして、机に突っ伏する。

 迷惑を掛けたくない。でも掛けてしまった。皆当然のように僕を放っておかない。当たり前、か。それはきっと良いことなんだ。僕の未熟さが、嫌い。大嫌い。放っておいて、なんて身勝手で自己中心的だ。分かってる。それは分かってる。ごめんなさい、ごめんなさい。息苦しい。もう嫌だ。ただただ嫌だ。あああああああああああああああああああああああああああああああ。死、って心配される。僕は大丈夫。僕は僕なりの理由が、いつもあるんだ。だけど、どこまでも子供だから。大人になったら、ならべく独りで生きよう。それが、最適解だ。僕は、どうしようも、なさすぎる。

 心配を掛けるって、迷惑を掛けるって、もの凄いストレスだ。逃げたら逃げたで、余計迷惑掛けるし、にっちもさっちもいかない。どうすればいい。モヤモヤは溜まる一方だ。

 早く大人になろう。そしてならべく独りで生きよう。親友も恋人も幼馴染も、要らない。優しさはレジ脇の募金箱に入れる、五円玉程度で十分だ。

 さらば。

 いつの間にか僕は眠っていて、窓から侵入した野良猫が「餌くれ餌くれ」と手の甲を舐める。ごわごわの被毛。そっと、頭のてっぺんを撫でだ。「それより餌くれ」と急かされ慌ててカリカリ出す。銀色の餌皿。カラカラ、ガリっ、ガリっ。とても、力強い。羨望が渦巻き、思わずため息を漏らしてしまった。あぁ、情けない。

 だけど、この未熟ささえも、小説に生かせるのだった。小説は、全てに寛容だ。それが小説の、良いところ。好きなところ。だから、僕は救われている。生きていられる。































































 <序文>


 僕は。過ちを犯した。彼、に。途方もなく迷惑をかけてしまった。迷惑、どころではない迷惑を、かけてしまった。僕は。彼の全てを、彼から、奪ってしまった。命さえも。奪ってしまった。僕は。僕は。

 <過去?の過去の過去>


 #1

 僕は変人として生きてゆきたい。

 好きでやっているのだ。荒川に飛び込んだのも、野良猫を一日中追いかけまわしたのも、公道でマイケルジャクソンのごとくムーンダンスをしながら読書したのも、地面に足をつけずに帰宅しようチャレンジをしたのも、全てそれが生きがいだからである。楽しいから、そうせずにはいられないから、一日一日そうやって生活しないとやっていけないからである。

 生きがい。

 生きがいはあるけど、いつ死んだって後悔のない生き方を、僕はしている、つもりだ。だって、人間いつ死ぬかわからないし。生きがいを持ってもいい、だけど生きる理由は持ちたくない。死ぬときは未練なんか一ミリも残さずに潔く死にたいから。少なからず僕の死を悲しんでくれる人はいるだろう。かなしんで、かなしんで、だけどしばらくすればまたいつものようにその人の生活は始まる。そんなもんであってほしいと、思う。自分の命は自分のものでありたいなんて、わがままな注文なのかな。

 変人万歳。変人っていう生き方は、面白いぞ。つまらなく生きるのなんてごめんだ。おもしろおかしくちゃんちゃらおかしく。はちゃめちゃに。ひゃっほう!

 それが僕だ。

 変人な僕が、僕なのだ。

 だから。

 否定しないでほしい。

 みんな、変人に厳しい。理解不能の存在を、理解可能な存在にしようと必死だ。なんで川に飛び込んだの?なんで猫追っかけまわしてるの?なんで白昼堂々バックしながら本読んでるの?なんでブロック塀の上を歩いてるの?きりなく訊いてくる。

 なんで?なんで?

 だとよ。

 正直、困る。

 そんなもの理由なんて無いよ。

 やりたいから、やっている、それだけだ。

 でも、嫌だなって思うのは。

「恥ずかしいからやめなさい!!頭、おかしいんじゃないの!?意味分かんない!!変な行動ばっかりして、将来ろくな人間にならないよ!あんたど大人になったらどうやって生活してくつもり!?」

 という、拒絶。ヒステリー。

 知るか。

 恥ずかしい、と思うのか。

 僕はこれが生きがいで、変人な僕だからこそ僕なんだ。

 やめろ、

 なんて。

 僕に対する、全否定。家族、なのに。僕のために言っているのかもしれない。だとしたら、それは偽善だ。間違っている。ただ自分の価値観を押し付けているだけだ。そんな気はないだろうおそらく。でも僕からはそうとしか思えない。

 理解できないなら理解できないなりに。せめて否定しないでほしい。黙って見過ごしてほしい。殴らないでほしい。怒鳴らないでほしい。矯正しようとしないでほしい。

 傷ついている、なんて気付かないだろう。僕のことを思って説教してあげてる、ようだから。とんだありがた迷惑だ。

 分からない、だろうけど。

 かなしい。

 いつか、僕の一部でも認め肯定してくれる理解者に出会いたい。優しく包み込んでくれるひとに出会いたい。

 なんて、傲慢だろうか。多分、傲慢なんだろう。理解者を持ってる人間なんて、いないのかもしれない。




 #3

「和(なごみ)ちゃんって障害者なの?」そう訊く人々、

『異端』の瓶を分かり易いようラべリングしたいだけ

『僕は変人なだけだ』と独り、心で叫んでやる

 馬鹿じゃねえのっ


 変人っていうのは苦しくて、

 天才っていうのは辛い。

 規則規則規則規則。ルールルールルールルール。そんなの如何だっていい。どうでもいい。邪魔はしない、だから邪魔をしないで。タフに生きたいんだ。縛られたくない。そういうのが僕で。言い訳でも屁理屈でも、なんでも無い。『若気の至り』でも無い。ただ僕が

 こうあるだけ。何でもない事を、大事(おおごと)にしないで。



 #4

 ぷっはあ。すーい。すうーい、すうーい、すうーい。ばしゃ。すーい、すうーい、すうーい、すうーい、すいー。

 とっても気持ちよさそうに。とってもうつくしく。とっても力強く。とっても速く。見とれてしまう何かが、彼の泳ぎにはあった。きれいだ。とってもきれいだ。

 しなやかな筋肉、細く長い手足。肉体美、だった。

 左手首の、白い紐。

 まさに吸い寄せられるように。僕は彼を眺める。それは幸福だった。胸が高鳴る。どくどく、どくどく。お互い、気持よくなっていた。

 好きだ。このひと、好きだ。

 全身で感じる。好きだ、という感情を。泣きたくなるぐらい、好きだ。この瞬間、爪の先まで喜んでしまう。嬉しい、ドキドキする、泣きたくなる。ちょっと苦しくて、ちょっと哀しい。彼はただただ黙々と泳ぎ続ける。

 水のなかを。

 僕の入れない領域を、たった一人で。しあわせそうに。あぁ、彼は生きている。全身で、生きている。とても、若い。若くて、美しい。ガラスケースに入った芸術品のようでも、あった。眺めるだけ。触れられない。時折聞こえる息継ぎの「ぷはぁ」だけで、彼の生命を知る。彼を、体中で、感じた。それはセックスのときの高揚感にも似ている。若さゆえの、高ぶり。は、は、はあ、はあ、あ、ああ、はあ、と、荒い息づかい。

 この時間が永遠に終わらなければいい。本気で好きになる。好き、好き、好き。止まらない、止められない。溢れる。その中で、もがく。必死に。もがいて、もがいて、少しだけ、ほんとうに少しだけ、身を委ねる。泣いていた。静かに、さめざめと。泣いていた。なんの意識も無く、涙が、流れていた。また、溢れる。抑えられない。止めどなく、流れる。欲望と、美しさの狭間で。ひとり僕は。

 恋焦がれる。

 間違いなく、幸福だった。

 僕っ子少女と、水泳青年は。

 ひとりで。幸せを感じ合っていた。

 青く、脆く。痛々しい。お互い流血している。でも、やめられない快感だった。

 お互いがお互いを愛していて、お互いがお互いを天才だと認めている。だからこそ、お互いがお互いを理解できなかった。

 澄んだ秋の空のように、息をのむほどの、きれいさで。届かなくて。

 ゆっくりと、息をはいた。

 時は、過ぎ去る。さよーなら。



 #5

 すごくかなしくて、すごく苦しい。

 なんでこんなにかなしいのか、分からない。だけど、猛烈にかなしい。胸のあたりを手掴みでぐしゃっと握られたみたいになって、心拍数があがって。どくどくどくどくどくどくどくどく。息苦しい。ふはふは、ふはふは、頑張って息をしてる。気の置けない誰かに、ぎゅっと抱き締めてほしかった。温かい、体温を感じたい。

 寂しくて、淋しい。哀しくて、悲しい。

 独りぼっちなのだ。心細すぎる。

 孤独は格好いいものなんかじゃなく、ただただ苦しいだけで。孤独ぶりたがりのティーンエイジャーなんかでは、決してないのだ。孤独にしか、なれないのだ。それしか、無いのだ。どこにも、行けない。だから孤独が、嫌いでも、あるけど。孤独が、好きでも、ある。満たされるのが、こわい。

 視界が、涙で滲む。

 僕はむずかしすぎる。こう言うと、ありきたりかもしれない。でも、ふわふわしているのだ。考え事が常に頭の中にぐるぐるしていて。僕が変わり者すぎるのだ。現実に、小説みたいな自由さは欠片も無いのに。青いハチマキを巻いて散歩するだけで、変質者になってしまうような、堅苦しさが、現実なのに。

 年相応になりたい。共感してほしい。たったそれだけだけど。それだけのことが、難しい。だから、小説を書くしかない。小説を書いて、一人で表現するしかない。ものがたりという枠を通じて、それで初めてみんなと繋がる。小説というのは僕にとっての日常で、みんなにとっても非日常でこそあれ一番身近で一番手軽な非日常だから。伝えられる。時には共感してくれる。でもその共感は、小説に対する共感なのであり、僕に対する共感では無い。それでも、少しは救われた。

 誰か、僕を認めて!

 小学生の時も、中学生の時も、高校に入ってからも、「 」になってくれるんじゃないかという、かすかな希望を捨てられずにいて、振り回した人が何人かいる。でも結局みな年相応で、ただ優しい。そして彼ら彼女らは、年相応に間違いもするけど、正しさが、あった。僕だけが間違えていた。親切でいい人達で、困っていたら誰にでも寄り添う。それは共感ではなくて、認可だった。それでも、優しいから。僕の変な行動を、頭ごなしに否定するでもなく。無駄に心配をかけ迷惑をかけ戸惑わせてしまって。申し訳なくて、顔を合わせられなくなってしまう。音信不通。そして傷つけてしまう。

 十七になってようやく、全ては幻想だと悟った。共感も理解もされないのだ。理解されないから、認めもされないし肯定もされない。ただただ一人だ。

 彼しか、いない。彼が、いる。

 だからこそ。僕は全てを小説に捧ぐ。僕には小説しかないから。小説家になろう。小説家として生きよう。それが僕の生きる道だ。たった一本の、生きる道だ。共感も理解も諦めた。奇人変人道化人だと思えばいい。「そういうひと」なんだと思えばいい。否定されなければそれで良い。それだけでしあわせだと思わなくちゃいけない。

 変人というのは、天才というのは、、どんなに語り合っても、、笑いあっても、泣きあっても、傷つけあっても、苦しみ合っても、抱き締めあっても、愛しあっても、支え合っても、どこかに、いつも見えない壁がある。その壁は時に両者を傷つけ、時に両者を結び付ける。寂しいだけのものではないけれど、やっぱり寂しい。



 <過去?>


 #6

 グランドピアノの音が鳴る。漆黒の、鍵盤だけが不自然に白いピアノ。何十年も弾きこまれた、古いピアノ。木々たちはざわめき、たちこめる霧は森を幻想的に包み込む。宵闇のなか、流星群は夜空一面を覆った。どこまでも静かだ。

 夜の森。闇の森。魔女の住む森。暗く、ひっそりとしていて。子供は皆泣き出し、大人は不安と闘う。デンジャラスで、刺激的。死も生も身近にある、世界本来の姿。すぐに傷つき血が流れる。なんにも守られていない。気を緩めると怪我をする。そして誰かに食べられてしまう。

 小鹿たちは跳ねまわり、狼は遠吠えをし、熊は赤い木の実を齧り続ける。美しい、は、美味しい、だ。どこかから、水音が聞こえた。しめやかに。張り詰めた、冷え冷えとした空気。

 そんな世界に。息をのむ。おそろしいほど、美しかった。力強い生命たちに、むせかえる。死にゆくものたちに、尊敬をする。宇宙を感じ、かなしみを感じ、死を感じ、生を感じる。全てが美しい。優美で甘美。宇宙の美しさ、かなしみの美しさ、死の美しさ。生命の美しさ、肉体の美しさ、官能美。鏡のように水面に映る紅い花、太陽に光る銀の指輪、月光に輝く純白の雪、ピンク色の夕日と北欧の街並み、教会の宝石のようなステンドグラス、楽器の音色、珈琲の香り。一瞬だけの、儚い美。だからこそ、美しさは際立って。呼吸を忘れるほど、みとれる。

 ここは女神たちの楽園だった。シャングリラだった。僕のピアノを子守唄に、皆眠る。美しい寝顔で。決して触れることなど出来ない、近くて遠い気配。彼女たちが安らかに眠り続けることへ、祈りを捧げる。祈りの、音楽。

 ジェラシー。

 僕の指は鍵盤を舞う。全身で、僕の全てで、奏でる。音楽を、創り出す。かなしみも怒りも、嫉妬も快楽も、よろこびも苦しみも、憎しみも後悔も、ぜんぶ、孕ませて。激しく静かに。ダイナミックに無感情に。天才的に凡庸に。演奏する。


「僕」の、 細く括った長い黒髪が。揺れる。艶やかに。巫女のように。「僕」は光輝ある美しい乙女だった。美しい女だった。どこまでも小説的で。どこまでも幻想的で。どこまでも天才的な。幻みたいな艶やかな乙女。艶めかしい処女。白く美しくきめ細かい、繊細な肌が。ヴァンパイアの血のような、目の覚めるほど鮮やかなブルーの、花魁装束から、垣間見える。「僕」の髪を括る紐は、彼、が左手首に巻いていたもの。真っ白な、紐。お守りのように。追悼のように。「僕」は四六時中、紐で髪を括る。

 愚かだった、己に。

 愚かでも、間違ってはいなかったかもしれない、己に。

 彼、が安らかに眠ることを、命がけで、祈らせて、くれと。

 贖罪の、ピアノ。弔いの、ピアノ。懺悔の、ピアノ。


 なんて、全部虚構だ。

 美し、すぎる。




 <過去?の過去>



 #7

 僕は。あの時、飛び出した。見ず知らずの少女を助けるために。それは愚かだった。少女は助かるはずなど無かったのだ。僕が超能力者なのならばまだしも。


 散歩道、目の前で、鉄道事故が起きようとしていた。

 踏切を渡る少女の後ろ姿に、電車が差し迫ってきている。

 カン、カン、カン、カン。

 目の前で、ひとつの若い命が、壊されようとしていた。少女は読書に夢中で、全く気付いていない。

 本能で僕は駆け出す。

 今ならば、間に合うかもしれない、ためらっている暇なんて無い、と。

 必死で。助けようとすることは、僕の中で当然だった。助けない、なんていう選択肢は無かった。だから、当たり前のように、駆け出した。自分のことなんて何一つ頭に無くて、あの少女を助けることしか、考えていなかった。

 走る。走る。あと2メートルで踏切。走る。黒と黄色のシマシマの、バーをくぐり。少女はすぐそこ。走る。手を伸ばす。手を伸ばした。それから、

 肩を、掴もうと――――

 はあ、はあ、はあ、はあ。

 その時、

 体が、吹っ飛んだ。

 何かに、体当たりされたような衝撃。

 痛い。

 視界の端で、人影が見える。

 白いワイシャツと。

 左手に巻きつけられた、白い紐。

 同時に。




 彼、だった。彼、の声だった。

 彼は、叫んだ。彼は、僕の、名前を、叫んだ。

 僕は、真っ黒な、ほんのり温かい、ちょっとごつごつしたアスファルトに、倒れて、いて。

 倒れ、て、いて。

 ああ僕は電車に轢かれたのだ。


 さようなら・・・こんな死に方も、悪くない・・・



 かと、おもいきや。


 目の前の光景に。

 戦慄する。

 目の前で。

 髪の毛を千切らせて。

 大量の、血を流し。

 どす黒い血を、なみなみと流し。

 肉片を、転がして。

 彼と。

 見知らぬ少女は。

 電車に。

 轢かれていた。

 電車に。

 轢かれていた。

 僕は。途方もなく。しっかりと。生きていた。

 僕だけが、助かってしまって、いた。

 彼は。

 さっきまで、隣を歩いていた、彼は。


 彼は。



 僕を突き飛ばし。僕を助け。



 死んでしまっていた。

 死んでしまっていた。

 死んでしまった。

 死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。死んでしまった。

 死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまった死んでしまったあああ。

 僕の、愛した、彼は。

 死んだ。

 ほんとうに、死んだ。

 うあああああああああああああああああああああああああああああうああああああああああうああああああああああああああああああうああああああああああああああああああああああああああああうあああああああああうああああああああああああああうあああああああああああうああああああああああああああああああああああうあああああああああああああああああああああうああああああああああうああああああああああああああああああああああああああああうああああああああああああああああああああああああうあああああああああああああああああああうああああああああああああああああああうあああああああああああああああああああああうあああああああああああうあああああううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ良いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっtぅtぅtぅtぅっっっっっtぅtぅtぅっっっっっっっっっっっっっっっぅはああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああはああああああああああああああああああああああああああはははははははははああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっぅっっっっぅっっっぅっっっっっぅっっっっっっっぅっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっッっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぅっっっっっっっっっっっっっぅっっっっつつつつっつつつつつつつつつつつつっつあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 少女に、手を伸ばしたとき。電車は。真横にきて、いたんだ。

 彼は、そこに、飛び込んで。突き飛ばし。助け。

 電車は、少女と彼を、轢いた後。ようやく、止まり。

 少女と彼は、電車の下敷きとなり。

 彼の、腕だけが。

 太陽の光を浴びていた。

 白い紐が、手首に巻かれている。

 水泳選手特有の、筋肉質な、

 腕。

 切断されて。

 腕だけが。

 砂利の上に、転がって。

 太陽の光を浴びている。

 白い、紐が。

 風に揺られて。

 そこだけが、平和だった。

 生々しく、飛び散った血は。

 彼、の血で。

 彼の血ならば。

 舐めたい。

 舐めたい。

 車両に、

 体を引きずりながら、

 近づく。

 ずりずり、ずりずり。

 だけど。いつの間にか居た、見知らぬ警察官に、制止された。肩を抱かれる。

 少女が、読んでいた、本、が。

 何食わぬ顔をして。

 落ちていて。

 タイトルは――

「理解者」

 見知らぬ少女は、どんな少女だったのだろう。


 僕は号泣していた。僕は号泣していた。



 僕が。

 彼を。

 殺してしまった。

 僕が。

 彼を。

 殺した。

 僕が、彼を、殺した。

 僕が彼を殺した。

 見知らぬ少女なんて。

 見捨てるべきだった。

 それが、正しい行いだった。

 助けられぬものを。

 助けようとして。

 彼を殺してしまった。

 警察官には。

 何も言わなかった。


 あの「なごみっ」、が、最期の言葉、に、なるなんて。


 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い





 彼は、キリストのように復活したりは、しない。ユーレイにも、ならない。生まれ変わったりも、しない。天性輪廻なんて、無い。




 #8

 うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ





 #9

 生麦生米生卵。




 #10

 僕は、無になった。




 #11

 痛い。




 #12

 あぁ




 #13

 ごめんなさいっ

 ごめんなさいっ




 #14

 んぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ




 #15

 ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ




 #16

 いぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ




 #17

 懺悔。懺悔。




 #18

 後悔なんていう、軽いものじゃなく。

 ただ、謝るしか、

 無く。




 #19

 何で、僕は、あの時、

 何で、僕は、あの時、




 #20

 助けようと、してしまったんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ




 #21

 寒い。ただどこまでも、寒い。

 うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ




 #22

「こんな死に方も悪くない」なんて、愚か過ぎる

 それが格好良いとでも、思っていたんだろうか




 #23

 僕が、絶対にしてはいけないこと。

 それは、自殺。それは、命懸けで何かをすること。




 #24

 ひとりぼっちで。 僕は、贖罪のためだけに、存在している。




 #25

「目を瞑り。彷徨い。」息を吐く。




 #26

『そのひと』は。優しく包み込んでくれた。

『そのひと』は。理解者でも共感者でもないけど。

 ただ、いろんな母親がするように。僕を優しく包み込んだ。




 #27

 僕の命は。僕のものじゃない。

 なんで彼は、僕なんかを助けたんだろう。僕なんて死んでもいいから、彼に、生きていて欲しかった。のに。




 #28

 どんよりと。 曇天の空模様。気分も、どんよりする。野良猫は、前足で顔を洗う。もうすぐ雨が降るだろう。どうせ降るなら、思いっきり土砂降りにしてほしい。猛烈に、滝のように降ってほしい。どんよりを、すっきりにさせてほしい。雨は、嫌いじゃない。雨は、不思議な感じがするから。だって、空から水が降ってくるんだよ?雨、って言葉も、ミステリアスだ。傘なんか差さずに。

 尋常小学校唱歌、四季の雨。


 降るとも見えじ春の雨、

 水に輪をかく波なくば、

 けぶるとばかり思わせて。

 降るとも見えじ春の雨。


 俄に過ぐる夏の雨、

 物ほし竿に白露を

 なごりとしばし走らせて。

 俄に過ぐる夏の雨。


 おりおりそそぐ秋の雨、

 木の葉木の実を野に山に

 色様々に染めなして。

 おりおりそそぐ秋の雨。


 聞くだに寒き冬の雨、

 窓の小笹にさやさやと

 更行く夜半をおとずれて。

 聞くだに寒き冬の雨。


 雨は雨でも、風のせいで斜めに降る雨が、好き。斜雨。体にたくさん雨粒が当たる。その感触が、好き。

 もうひとつ。素敵な、雨。

 流星群があらわれてから、三十日後に降る雨を、星屑の雨、というらしい。大気中に落下した宇宙塵が、雨の核になって、できる雨。つまり、雨の中に星屑が入っている。

 なんて、ろまんちっく、すぎるか。

 えっへへーん。誰も見ていないけど、一人で照れる。

 雨が降ってきた。垂直な雨。今日は、水色の傘をさす。

 ぱらぱら。ぱらぱら。

 雨粒は止めどなく降ってくる。

 くるくる。くるくる。ぴかぴか傘の、柄を、回す。

 んふふふふ。んふふふふ。

 んふふふふ。んふふふふ。

 きょうの雨はどこまでも綺麗だった。

 僕は、生きていた。

 上機嫌のふりをして。

 僕が生きているところを、どこかに漂っているかもしれない彼の魂に、見せつけないといけなかったから。そのために彼は僕を助けたのだから。だから、だから、上機嫌のふりをして、生きるしか、なかった。



 #29

 彼と一緒に、生きたかった。よぉ。

 自業自得、だけ、どぉ。



 #30

 理解者が。欲しい。





 <現在>




 という、とても短いけれど、とても深く、とても愚かで、とても残虐な、僕の身の上話。






 再び毎日同じことを想う。


 僕は愚かで。僕は色んな人に迷惑をかけっぱなしで。彼には、彼には、とんでもなく、途方もなく、傷つけてしまった。色んな人。母にも、姉にも、通っていた学校でも、近所のおじさんにもお姉さんにも、迷惑をかけてばかりで。傷つけて。

 そんな自分が、嫌だ。

 だから僕は。優しさは、スーパーのおばちゃんがおまけにつけてくれたお惣菜ぐらいでいい。その程度の人との関わりをし、あとは一人で生きていく。

 幸い僕は社会人で。ある程度の生活スキルは持ち合わせており。人はひとりでは生きて行けないけれど、必要最小限の人との関わりで済ませて。あとは、一匹狼。

 もう誰にも迷惑かけたくないから。心配かけたくないから。傷つけたくないから。僕はそれで大丈夫だから。

 ならべく、一人で生きて行く。ならべく、優しさとも温もりとも無縁の生活を、する。しなければ、ならない。

 それが、いちばんいい。僕の命は、彼の命だから。彼のもの以外何でもないから。誰かと関わって、彼だけのものじゃ無くなったら、駄目だから。適度に会話をし、適度に笑みを浮かべ、適度に距離を置く。孤独のほうが圧倒的に楽だったし、圧倒的に自由だった。彼への贖罪だけの、余生だ。もう、大変なことも哀しいことも後悔も嫉妬も怒りも憎しみもよろこびも快楽も、何もないから。ただ淡々と生きて行くだけだから。もう誰も傷つけないし、心配させないし、迷惑もかけない。これ以上ない、最良だ。



 小説を書くとき、いつも気付かないうちに返り血を浴びている。そして現実に戻ったら、妙に心拍数が上がってどくどくする。どくどくする。なんか気持ちがスカスカして、ハイテンションになりたがる。部屋中をぴょんぴょん跳ねまわりながら、うひょうひょうひょうひょ叫ぶ。それを五分ぐらい続けるのだ。五分経つと疲れてベットに倒れこむ。一休みして、また執筆。こんな日々が、生きてるなって、感じる。生きててよかったとは、思えないし、ならべく一人で生きているけど、寂しくないのだ。僕には僕の生き方があって、写真の中で彼はいっつも微笑んでくれている。申し訳ないぐらい十分だ。僕がこうして生きていること自体が、盛大な彼の愛で。ハッピーエンドとは程遠いけど。僕は、生きてるぅ。

 そう、罪深くも生き延びてしまったから。



 苦しいときは小説を書き、哀しいときも小説を書き、楽しいときも小説を書く。何も無いときも小説を書く。




『そのひと』は。僕の一人暮らしのアパートに、蛍光灯を浴びて、しゃがんでいた。木製の、小さな机の前で。傍らには電子ピアノがあった。じっと、フローリングを見つめて。なにか大事なことを思案しているようでもあったし、なにも考えていないようでもあった。キャミソールからむき出しになった腕が、やけに血色よく。ああ、この不法侵入者は貧血なんぞとは無縁の生活を送っているんだろうな、と勝手に羨ましがる。

 お腹空いた、と『そのひと』は言い、無論僕も空腹状態だったので、夕ご飯にすることにした。煮干しから出汁をとった味噌汁と、白米、スーパーで買ってきたばかりの刺身。サーモンサーモン。おいしい。隣にのってる大根にも、醤油をつけて、もぐもぐ。向かいに座る『そのひと』とも、もぐもぐ。というか、もきゅもきゅ。存外可愛らしい食べ方であった。咀嚼(そしゃく)音だけが聞こえる。そして具無し味噌汁をすすり。ふうっと、息をはく。誰かに自分の料理を食べさせる、というのは久し振りの体験だった。途轍もなく、平和だ。

 僕は『そのひと』に何も訊かなかったし、『そのひと』も僕に何も言わなかった。僕は幸せになってはいけなかったし、満たされてもいけなかった。だから、というわけでもないけれど、お互い静かで。立ち入ってはいけないのだと分かっていたし、すぐに帰っていくだろうと僕は思った。その人にはその人なりの理由があるのだし、今こうして食卓を囲んでいるのは優しさでも同情でも気遣いでもなく、食べさせてと言われたから食べさせた、というだけ。善人じゃないから。

 しょせん自分以外は他人なのだし。

 彼、でさえ、大切なひとで、愛するひとで、命の恩人だけど、他人であることに変わりはない。

 僕はサーモンを食べる権利があるのだろうか。僕が、鮭の命をいただくことは許されるのだろうか。人の命を、奪ったのに。でも、生きるしか、ない。死ぬなんて、許されない。だから、サーモンを食べるしかない。

 鮭よ、ごめんな。こんな人間に食べられてしまうなんて、無念だろう。でも僕は君を食べるんだ。


『そのひと』は、僕がお風呂に入っている間に、帰っていった。「私はユーレイです」という置手紙と、「理解者」という本を残して。

 僕は阿呆みたいに息を呑んだ。

 見知らぬ少女の――

 その本には、虹色の、とても美しいカバー絵が描かれていた。

 



 どうしようもなく好きだったの。柔らかに、髪を撫でてくれた彼が、好きだったの。お互い理解不能な存在だったけど。弱さも、強さも、辛いことも、快楽も、すべて知っていたの。かつて、ずっと隣にいてくれたの。こっちを向いて、笑ってくれたの。抱き締めてくれたの。さっぱりと、優しくキスをしたの。ときめいていたの。たまに、したの。は、は、はあ、あ、はあ、はあ、はあ。甘く柔らかに。でも現実はあくまで、現実で。現実のままで。彼が、いなくなる、なんて。死んでしまう、なんて。しかも、僕のせいで。最期、彼はどんな表情をしていたんだろう。どんなことを、思ったんだろう。彼は、もっともっと、生きたかった、だろう。それを、僕は。僕は。僕がいろんなものを失ったのは、全て自業自得だけど。彼は。彼は被害者。僕から、全てを、奪われてしまった。僕は、僕は。僕は、彼の全てを、彼から、奪ってしまった。命さえも。奪ってしまった。憎んでるかな。憎んでいてほしい。憎んでくれ。あぁ。僕は。大罪人だ。あぁ。僕は、過ちを犯した。愚かすぎた。あぁ。あぁ。あぁ。あぁ。命日が何回も過ぎて、それでもなお。折り合いなんてつけられるはずもなく。あぁ。あぁ。あぁ。あぁ。本当に、毎日毎日同じことを思う。

 多くの人がするかもしれない、一回だけの本気だったの、に。

 しょっぱい。しょっぱすぎるよぉ。



 #


『そのひと』は。


 僕が助けそこなった、彼と共に死んでいった、見知らぬ少女の、ユーレイなのだそうだ。

 電車に轢かれた、あの少女だったそうだ。


『そのひと』は。










 静かに、深く 、深く 、ずっと 、ずっと 、頭を下げ続けた。

 静かに、深く 、深く 、ずっと 、ずっと 、頭を下げ続けた。









 彼女は、頭を下げながら、涙を堅く堪えていた。


 その沈黙に、彼女と「僕」は、血を流す。大量出血。


 二人とも、堰が切れた。


 ただただ静かに。


 その感情は、どの感情でもなかったし、どの感情でもあった。

 共有している、と二人にひしひしと伝わる。

「なにか」ですらない「なにか」、が埋め尽くす。

 ばうばう、ばうばう、ばうばう。

「僕」にとってそれはよくあることだった。

 だから「僕」だけはそれに身を任せた。

 』


『そのひと』にとって、『そのひと』は大罪人ということらしい。『そのひと』が、僕と彼を、殺した、らしい。

 たとえ僕と彼が死んでしまっているとして、それはただただ僕のせいだ。『そのひと』は、助けなんて求めていなかった。自らの危機に気付いてすらいなかった。僕が勝手に助けようとして、助けられなくて、彼を殺してしまって、『そのひと』を罪悪感で生き埋めにしてしまった。

 ただただ僕がどうしようもなく愚かだというだけだ。

 それにほら、僕は物理的に生きている。どこまでも生きている。愚かにも生きている。

 馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿すぎる。


 僕は。










 静かに、深く、深く、ずっと、ずっと、頭を下げ続けた。

 静かに、深く、深く、ずっと、ずっと、頭を下げ続けた。









『そのひと』は、共に生きて、抱き締めてくれた。心の底から。慈しんでくれた。僕が、温かい体温を感じることなんて許されていないのに。『そのひと』は。時に乱暴なまでに。僕を愛した。


 一人で生きて行くと決めたのに。『そのひと』はどこまでも。僕を優しく包み込む。

 ただ淡々と生きて行くほうが楽なのに、抱き締められて、とても気持ちが良くて。いけないと分かっていても、身を委ねたくなる。何故そんなに愛そうとするの。困ってしまう。僕はまた、ユーレイの君でさえも傷つけて、迷惑を掛けて、粉々にしてしまうだろう。その前に、僕から、離れて、ほしかった。僕は、快楽を、感じてはいけないのだし。

 それでもなお、『そのひと』は天女のような笑顔で僕の髪を撫でる。すると、ついつい、うとうとしてしまう。独りは、楽だけど、寂しくて。僕は、弱く、弱すぎる。


 ある日、『そのひと』は言った。


 貴女様に愛され貴女様を愛したあのお方は、とても格好良く、潔く、何食わぬ顔で、亡くなられていきました――



 ごめんなさい、幸せに、なってください。



 僕は罪深くも号泣してしまった。

 彼は、どこまでも、永遠に、格好良い。

 格好良くて、美しい。


 彼は、言うだろう。

 和(なごみ)は和(なごみ)らしく生きろ、と。

 それでこそ和(なごみ)だ、と。


 そうじゃなきゃ困るんだよ、と。


 俺のことなんてさっさと忘れろ、重たいんだよ、と。


 僕たちは、どこまでも青臭くて痛いままだ。


 日常生活に、ものがたり、を求めてしまうから。


 それが僕たちだから。


 だけど、僕だけはずっとずっと、醜く汚い。




 そっと。

 そっと。

 そうっと。

 その、丸みを帯びたすべすべの身体に。

 身を、委ねてみた。

 温かな、優しい体温。

 そっと。

 そっと。

 そうっと。

 涙した。

 その涙は。

 醜くも温かかった。

 いけない、のに、

 温かい。

 じゃあね。

 もう彼を、困らせることは無い。彼の魂は、成仏されただろう。今生の別れだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

束縛 佐田 環 @06hutabasei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ