第17話 外圧
「百合さんが直接関わって居るのに絞りきれない……。高校生でありながら、かなり凄腕のエージェントが入っていますのね」
同じ様な話し方でも、お姉様に関して言えば私には微妙な強弱やイントネーションでわかる。これは嫌みでは無く本当に驚いている。
つまり百合先輩は、お姉様が素直に認める程に諜報員として優秀だと言う事だ。
「振興会では執行部にあたる組織の中でも、トップクラスである
恐らくは魔法使いとしては最低でもクラスC、かつ情報収集能力にも優れたエージェントを送り込んできている、とみて良いだろう。
「ちなみにアメリカのS.S.C.に関して言えば、ハイティーンの日本語が出来るアジア人。この条件に合うエージェントを揃えられずに学校への潜入は断念した。……これは確定情報よ」
「校内に関して言えば
この話、アメリカのエージェントが学校には入っていない。と言う事が確定しただけ。むしろこれでは、うつくしヶ丘を歩く外国人全てが怪しく見えてしまう。
公園の件については町内で観測していたのは間違い無いのだから。
……敵か味方か、それさえわからない。
もちろん実際の国家間だけでなく、魔法使い同士としても友好条約を締結しているアメリカやイギリスの組織である以上、振興会としてみればもちろん、そう言う意味では敵では無いはずだが。
「誰であるのか、も当然大事ではあるのですけれど。もっとも重要なのは何の為に、と言う部分ですわね」
「引き続き調査は続行する、それで良いわね? あやめさん」
「むしろお願いします。……それに外部の方がこの校内で、わたくし達に内緒で動いていらっしゃる。と言うのは単純に面白くありませんわ。調査については、我が振興会うつくしヶ丘分室として総力を挙げる事とします」
お姉様、この集まりは古道具愛好会だったはずでは……。
「ついてはわたくしも直接、調査に参加致しましょう。他の方はあえて静観、直接の行動はしないで何か気が付く事があったなら、わたくしか百合さんに連絡して頂く。と言う事でどうかしら。……百合さん、よろしくて?」
「人手が多い分には助かる。とは言え、誰でも良いというわけにはいかないし、あやめさんならば歓迎するわ」
『この二人。仲が良いのか悪いのか、どっち?』
桜に脇腹を小突かれ耳打ちされる。
この会話を聞いていれば当然そう言う疑問は持つだろう。……私だって知りたい。
『魔法使いや振興会幹部としてはお互いリスペクトしているのだと思う。その他のことについての私の意見は……、ノーコメントで』
『まぁ、ね。……華ちゃんの意見は聞くまでも無く、顔に書いてあるけどね』
少なくとも私がどう思っているかについては、桜にはわかって貰えたらしい。
……うかつに口に出せない感情をわかって貰える。桜の存在は私にとって非常にありがたい。
以前の私なら情報部分以外は全く興味を持たずに、空気など読もうともしなかっただろう。
彼女のお陰で
――まぁ一応、執行部統括なので
と言い訳臭く言える程度には一般常識がついた。
それが良い事か悪い事かはこの際置く。
だって、女子高生の華としては間違い無く良い事だと思うが。
この場にあってはあまり良い事では無いように思うから。
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