第16話 諜報課の目的
「いずれにしろ、執行部で情報制限のかかっている事項はこれくらいですわね」
「結構です。では次は
「そう願えますかしら、百合さん」
後から編入した私は当然その辺の事は知らないが、桜や仁史君は入学式の日から委員長を知っている。
つまり催眠術か何かで強引に記憶を操作したのでも無い限り。
公園での野良魔法使い事件の発生前から、既に諜報課は学校に潜り込んでいたのだ。
ならばその理由があるはず、と言う話である。
ついでに言えば学校全体、教職員まで含めれば2、000人強。その他出入りの関係者まで、となれば人数は際限なく増える。
そんな大規模な記憶操作など、できるはずは無い。
ちなみに催眠術の使い手は、魔法関連の組織なら必ず複数人抱えている。
関係の無い目撃者や、魔法を封印した野良魔法使いなどに対して記憶操作が必要になるから。
魔法では人体に直接変異を与える事ができない。
肉体のみならず、記憶にも当然その縛りはかかるから。と言う理由だ。
「話は例の“
「ちょっと待て,スズラン。総務から執行部に情報が上がったのが事件の数日前、現場の俺達に連絡があったのは当日だぞ!」
大葉さんが不満の声を上げる。
まぁ、当然だろう。早期に探し当てれば
それにその件では、大葉さんの幼なじみでもある執行課長、カキツバタさんが結構な怪我をしたのだ。
……当人がお腹に包帯を巻いたまま、手術から数えること三日目に病院から逃げてしまった。と言うのは、それはまた別の話。
“呪いの書”関連の事件で大怪我をした、その事実は変わらない。
「話は国家間の機密に関わる事象です。むやみに一般職員が知れば、それだけでも命に係わる問題ですよ? 大葉監理課長」
「話はわかるが納得できるかっ! それに一般職員じゃ無い、俺は管理職だっ!」
「だからこそ秘密になっていたのです。……当然、あなたのように納得できない人もでるのはわかりきっている」
そう言うと百合先輩は、大葉さんから視線を外して窓の外を見る。
――それに。窓の外を見たまま百合先輩は続ける。
「情報は呪いの書だけではなかった」
「他にも何か知ってたのか?」
「大葉さんに直接関わる話ではありません、ただ……」
言いよどんだ百合さんに対して、お姉様は特になにを言うでも無くそのまま言葉が紡がれるのを待つ。
……こう言う間が、凄く恐怖を感じる部分なのだな。と実感する。
見る限り、少なくとも大葉さんと、そして富良野君は私と同じ感情を共有してくれているようだ。
私も標準的な反応をしている、と思って良いのだろう。……多分。
「このうつくしヶ丘高校に
「……なるほど、わたくし達執行部が“呪いの書事件”に別の角度から関わるのは五月の連休明け。諜報課は一ヶ月以上前ですのね。――それで、
「生徒である、と言うところまではわかったけれど。……そこまでね」
おおよそ感情というものを感じさせない。
喋り方だけでは出た言葉以外何も伺えない話し方で、百合先輩が答える。
……国際外語課には当然白人の先生方も複数人在籍しているが、生徒だ。と言うならば見た目は最低、アジア人、と言うよりは日本人でなければ目立つ。
多少色が黒いだけである私でさえ、かなり目立っているくらいだ。
コレについては元々色白の桜やお姉様、彼女達と
とも言えるのだろうが。
とは言え生徒にも当然複数人、外国籍や私(は、そう言う“設定”であるだけだが)のようなハーフやクオーターの帰国子女である生徒も、思うよりは在籍している。
だが、一方。イングランドの組織だとは言え、極秘任務で行動するなら明らかな外国人では目立って仕方が無い。
うつくしヶ丘高校は日本の普通の進学校。
確かに留学生がいるし、外語科だってある。外国籍の教師もいるとは言え。
そこまでワールドワイドな感じでは無い。
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