愛と狂気が表裏一体の魔物と堅実な勇者が世界を救うってありですか?
那珂町ぐいと
第1話
プロローグ
なんで、なんでこうなるの!
ボクはただ、愛情を伝えたいだけなのに!
どうしてみんなボクから離れていくんだ!
ボクが人間じゃないから?
ボクが魔物だから?
……、
そうか、じゃあ仕方ないよね。ボクは魔物でボクが愛した人間はみんなボクらより弱いから。強いモノには勝てないから強いモノは恐怖の対象にしかなり得ない。
「ねえ、どう思う?木こりさん、アナタの意見を聞かせてよ!私が愛した人間の一人としてさぁ!!」
「く、くるな化け物!!それ以上近づくな!どうせ魔物はみんな人間を食料としか見ていないんじゃないのか昔から!儂は信じないぞ!魔物が人間を愛するなんて馬鹿馬鹿しい!」
「そっか、ありがとうおじさん。」
「わ、わかればいいんだ....」
「ねえ、おじさん、一つ聞いても良い?結構大事な質問なんだけどさ」
「な、なんだ急に...、一応聞いてやっても良いが、儂が答えたらここから立ち去れ!良いな?」
「わかってるよそれぐらい。今時魔物の中じゃ常識よ?じゃあ気を取り直して...、コホン、おじさんさあ、八つ裂きと串刺しどっちが良い?」
「は?」
「答えるのが遅いよ、もう!」
「ぎゃぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあ!!」
「いい声ね、おじさん。来世では魔物に優しくするべきだよ?魔物だって恩返し出来るんだから。」
魔物はそう言い不敵に笑う。紅く濡れた鉤爪を舐めながら。
第一章
〜恋は突然に、まさにラブストーリー〜
「はぁ、退屈だなぁ...、なんか面白い人間とか来ないかなぁ〜?」
「お前か、ここら辺で悪さをしてるとかいう悪魔とかいうヤツは」
「なによ急に、そうだけどなんか用?」
「用があるからここに来たんだ。ここに来た目的はな、お前を倒しに来た。」
「いいね、そういうの大好きよ?ボク!なになに?ボクを倒したらなんか貰えるの?だったらさあ、ボクも負けるわけにはいかないかなぁ?」
「フン、強がっていられるのも今のうちだ、魔物!」
「わお!威勢が良いね!気に入ったよ!お兄さん名前は?ボクは魔王の娘のヴァンプ!よろしくね!」
「本来であれば名乗るべきではないのだろうが魔王の娘とあれば名乗るしかないな。我が名はレイス!伝説の勇者の末裔である!この戦いはいわば、勇者の一族と魔王の一族の決闘である!いざ尋常に、勝負!!」
「....、お手並み拝見といこうかな」
あれから何時間が経っただろうか。
両者とも一歩も譲らず、お互いに残り、もう一手というところで、不思議な出来事がが起きた。
辺り一面が眩しい閃光に包まれたかと思うと目の前に美しい銀髪の女性が立っていた。
「そこのレディ!ここは貴方のような可憐で美しい女性がいて良い場所ではない!危ないから私の後ろへ!」
「ちょっと!ボクも可憐で美しい女性なんだけど!」
「うるさいぞヴァンプ、今はこの女性と話しているんだ」
「むっきー!!もう腹たった!おこだよ!ヴァンプちゃんおこだよ!激がつくほど怒ってるよ!」
二人がそう言い争っていると二人の間に立っていた女性が口を開いた。
「もし、そこの御二方、私の質問に答えてもらえないでしょうか?そんな物騒なモノはしまってくださいな。落ち着いて話も出来ませんわ」
「ん...」
「むう...、そう言われては仕方ない。おい、ヴァンプ、一時休戦だ。今はこの女性の話を聞こうじゃないか」
「あの、女性って呼ぶのやめてくれません?私にも名前はあるので...」
「これは失礼しました、では私、名前をレイスと申します。こちらの失礼そうな小娘はヴァンプと言います」
「レイスさんにヴァンプちゃんですか、よろしくお願いいたしますね。そして私の名前はヒュースと申します」
「よろしくねヒュースちゃん!」
「こらヴァンプ!ヒュースちゃんではなくヒュースさんと呼べ!礼儀も知らんのか!」
「えー?だってボク魔物だし〜?人間のルールなんてない知らないですし〜」
「あ、あの呼び方はなんでも良いので、私の話を聞いてください!」
「だってよレイス!やーいレイスのお間抜けさん!」
「誰が間抜けだ小娘!やはり貴様は今ここで倒させてもらう!」
「あの!!話を聞いてください!!本題に入りたいんです!!」
「「あ、すいません....」」
「コ、コホン、まず質問なんですがお二人の関係は?」
「「敵」」
「敵!?じゃあなぜあんな仲良くしていたのですか!?」
「私は仲良くなどしていない。コイツが勝手につっかかってくるだけだ」
「ボクはこの人の顔めちゃくちゃタイプだし、強いし、殺したらどんな風になるのかなぁって思ってるだけだよ?」
「そ、そうですか...、では、二つ目の質問です、えぇと、ヴァンプさん?に質問があります。」
「ヴァンプちゃんでいいよ〜!で質問ってなにかな!」
「えっとですね、ヴァンプちゃんはレイスさんのことをどう思っていますか?」
「殺したいぐらいに好きだよ?」
「わかりました、ありがとうございます。ではレイスさん、ヴァンプちゃんのことをどう思っていますか?」
「まあ良くは思ってはいない。宿敵のようなものだからな」
「ちょっとー!ボクのことそんな風に思ってたんですね!ボクはこんなにも愛しているのに!」
「お前は何を言っているんだ?今までの言動を振り返ってみろ、ふつうに印象最悪だぞ」
「ひどい!そんなハッキリ言わなくても!」
「と、とにかく!お二人の今の印象がわかった今!お二人の治して欲しいところをお互いに言い合い、更に仲を深めよう!というものです!」
「なぜそんなことしなければならんのだ、よりにもよってこの小娘と」
「ボクは別にレイスとくっつくのはイヤじゃないし、むしろどんとこい!我が闇に抱いてやろう!」
「唐突に魔族要素を出してきたな....」
「カッコいいでしょ?」
「別に、くだらんな」
「あ、あの念のためにお聞きしますが、お二人は本当に付き合っていらっしゃらないんですよね?」
「そうだけど」
「そうだが?」
「疑いのレベルが更に上がりましたよ...」
「付き合ってないのは事実だ。」
「そうですか...、ではわかりました、あなた方に手伝って欲しいことがあります。それは....、お二人にはこの世界とは別の世界で付き合い、結婚生活を送ってもらいます!」
「は?」
「え?」
「お二人には、地球という異世界でてぇてぇポイントというものを稼いでもらい地球に住んでいる人々を助けていただきます。てぇてぇポイントというものは地球のニホンという場所で生まれました。ニホンでは可愛くて尊いものだけが尊いとされてきましたが、その考え方が変わり、世界はてぇてぇ戦争という大規模な戦争にまで発展しました。多分、宗教間の戦争と一緒だと思います。それによりその世界はてぇてぇが禁止されてしまいました。世の中には反てぇてぇ組織が蔓延り、シャチクと呼ばれるモンスターが多く増えたそうです。そのシャチクというのはてぇてぇを忘れ自分に課されたもののみをこなし、ザンギョーと呼ばれる特殊な技を使いステータスを上げると聞きます。」
「なんだと...!?そんなことがあっていいのか!たかが宗教間の戦争で人間が魔物になるなど!許してはおけない!」
「わぁ、急にやる気になったよこの人...、まあでもその話を聞いてボクも何も思わないわけじゃないしね」
「おや、魔物のくせに賢いじゃないか」
「いい加減ヴァンプちゃんと呼んでくれてもいいんじゃないかなぁ?」
「ではお二人は行ってくれるのですね!?遠い異世界のニホンに!!」
「ボクはレイスが一緒ならどこでも行くよ!だって大好きだし!殺したいほどにね!」
「最後のは脅迫と受け取っていいんだな?よし、貴様とはニホンとやらで決着をつけさせてもらおう。」
「あの、条件がありましてね...、あちらの世界では、能力の全てが使えなくなり、一般人と同じステータスにもなります、ですが戦闘時にだけ、能力が全て使えるようになります。ですので、無理な戦いはせず、出来るだけ戦闘は避ける方向で...」
「まあ敵から身を隠す為なら仕方ないな。まあコイツと結婚というのはまだ納得できんがな」
「もっと喜んでよ!!喜んでるボクがバカみたいじゃないか!いいでしょ?こんな若くにお嫁さんがもらえて幸せな家庭を築けるんだよ!?喜んでよ!」
「お前じゃなきゃ大喜びしてたところだよ」
「ボクじゃ不服か!?」
「ああ」
「即答!?ボク悲しいよ!!」
「あ、あの、そろそろニホンに送っても良いですかね...?」
「....ボクは構わないよ、その世界はちょっと興味あるし、この堅物を絶対に惚れさせてみせる!そして絶対に幸せになる!!」
「フン、では私は貴様に絶対惚れないように頑張るとするか」
「あ、あの当初の目的をお忘れですか...?」
「あ」
「ふっふっふ、この勝負ボクの勝ちだね!」
「クッ...!まさかこれが狙いか!」
「いや、狙いも何もレイスが勝手に引っかかってただけじゃん...」
「と、とにかく、ニホンというのは場所で人を救えば良いのだな!さあ行くぞ!ヴァンプ!早くしないと置いてくぞ!」
「は、初めて名前で呼んでくれた...!もう、急がなくてもニホンは動かないで待ってるよ〜!それとも新婚生活が楽しみなのかなぁ〜?」
「俺は人が救いたいだけだ。べ、別にお前の事が好きとかいう事じゃなくただ単純に人を救えば良いことがある、とお祖父様から教わっていたのを思い出したからだ。勘違いするなよ!」
「んん?んんんん?」
(何今の!?なんか胸のあたりがキュンってした!あのイケメン顔からこんな可愛らしいセリフが出るの!?)
「どうした?ヴァンプ、怖気付いたか?」
「違うよっ!覚悟を決めてたんだよ!」
「ではお二人を今からニホンに転送いたします。場所はニホンのトウキョという場所です。お二人のご活躍をお祈りしております。」
「ボクなんだかワクワクしてきちゃった!」
「まさか貴様と意見が合うとはな、珍しい事もあるもんだ」
「今からあなた方はこの場を持って夫婦となります。頑張って愛を育み、世界を救ってください!『第三の魔法!ゲート!』」
そうヒュースが呪文を唱えると辺り一面が眩しい光に包まれたかと思うと、今までいた場所ではなく、景色も森の中から無機質な壁が並び立つ場所と変わり、森の動物に変わり多くの人間に囲まれていた
そこはもう自分達の世界ではないと実感した。全てが絶望に包まれ、人々の顔は暗く沈み、まるでゾンビのようだ。
「ね、ねえレイス、ボクちょっと不安かも...」
「奇遇だな、私もだ...」
私達の願いは今一つに重なった。
この世界で生き抜き、元の世界に帰ること。
この世界を救うこと。
そして、
元の世界に戻りあの女を一発ぶん殴ること。
「「さあ、異世界生活の第一歩と行こうか!!」」
愛と狂気が表裏一体の魔物と堅実な勇者が世界を救うってありですか? 那珂町ぐいと @Masumurukai58
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