第28話
ああ。今なら『オルスタの聖女』が願ったことが分かる。自分の『聖なるちから』を継いだ子孫のちからを悪用されることを嫌ったからだ。
私は守っていこう。この『優しい村』を。
【 お前は外から守ればいい。この中は今まで通り村の者で守る。・・・精霊が守るこの地を。そして、『外の仕事』が終わったらこの地に戻ればいい。精霊はナシードがこの地に住むのを認めている 】
【 ・・・私の心を読むな、と・・・。まあいい。どうせ心の内はすべてバレているのだからな 】
【 ああ。仕事のことは分からんが、グチなら聞いてやる。友達がほしいならオレがなってやるし、家族が欲しけりゃオヤジたちが喜んで息子にするぞ 】
【 ・・・どこまで知ってるんだ 】
【 ・・・流行り風邪で兄貴たちが亡くなって、親父は命が助かったものの王の責務が続けられなくなって王になったこと。側近たちが無能だったから総替えしたこと。それから・・・ 】
【あー!もういい!恥ずかしい 】
【 気にするな。『いまさら』だ 】
シュリの、イタズラが成功したような含み笑いにナシードは白旗をあげた。
しかし、翌月にこのことがシュリの家族を救った。
・・・予定日より早く産気づいたレリーナのことをミリアーナからユーリカ経由で聞いたシンシアたちはすぐに駆けつけることが出来た。少しでも気付くのが遅ければ、母子ともに生命を落としていた。シンシアたちが駆けつけた時、レリーナはすでに破水しており、その横でミリアーナがお腹の子たちに声をかけ励まし続けたため、弱っていたものの無事に生まれることが出来た。
「ミリィとユーリカは、リュシーナとリュオンの『小さなお母さん』だな」
「お母さんがひとりで赤ちゃん二人の面倒を見るのは大変だけど『小さなお母さんたち』がいるからな。・・・もちろん、お手伝いしてくれるんだよな?」
「うん。する!」
「わたしも する!」
「「 わたしたちも『おかあさん』だもんねー 」」
この小さくも大きな騒動が、『子供たちに聖女のちからが宿っている』ことが真実だと改めて知ることとなった。
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