第11話
王都の神殿には、アストリア帝国の各地から『聖女候補』が30人近く集められていた。
彼女たちはこれから2年間、神殿で共同生活をしながら『聖女になるための修行』をしていくことになる。
その中にレリーナの姿はない。
さらに、ダントン親娘による『元・聖女一家に対する数々の悪意ある行為』があったため、レリーナは『聖女候補』から外されることになった。
そしてダントン一家は領地没収と爵位剥奪となった。
それ以上のことは、オルスタ村には何も入ってこなかった。
ただ、ダントンから没収した領地は『王家直轄』で管理されることとなった。
「レリ。おはよう」
「おはよう。シア」
「今日は朝から『ピピンの実』が満載ね」
「・・・ちゃんと、残り少なくなってきた薬草も摘んできたわよ」
「また『キズ薬』ね。・・・シュリは相変わらず?」
「ええ。喘息はすっかり治ったのだけど・・・いまは鍛錬に夢中で、毎日傷だらけよ」
そう。シュリはあの儀式後に起きた『レリーナ誘拐未遂』以降、竹刀から木刀に。そして『鉄の
その分、傷を負う日々が続き、レリーナは大量のキズ薬を作り置きしている。
今はその傷も少なくなってきた。
「シア。・・・オルガはどう?」
「相変わらずよ。本当に『アレ』で大丈夫か、心配になってくるわ」
「でも支えていくのでしょ?」
「それは『レリも』でしょ」
そう言って、2人は顔を合わせてクスクスと笑い合う。
「オルスタ村の『二大美女』が、こんな朝早くから何の『悪巧み』をしているのかな?」
レリーナとシンシアが振り向くと、2人が噂していたシュリとオルガが立っていた。
あの日からすでに10年。
シュリは18歳になった2年前にレリーナに求婚し、今年結婚式をあげた。
今は、レリーナの家で新婚家庭を築きつつ、薬師の受付をしながら、村の警備隊にも参加している。
そしてオルガ。
・・・彼はこの領地に『次代の聖女』を探す儀式でこの村にも来た『元・神官』だ。
彼は
そんな彼は改めてオルスタ村を訪れて、レリーナに謝罪をした。
もちろんレリーナを怖がらせないよう、玄関の扉越しに。
その配慮が村の人々の心を動かした。
身寄りがないオルガを村に住まわせた。
そして『知識の高さ』から、村長の仕事を手伝うようになった。
その関係から、それまでレリーナの『薬屋』を手伝いつつ、父親の後継として村長の仕事もしていたシンシアは、オルガと意見を出し合うようになり、いつのまにか互いを必要とするようになっていた。
2人は3年前に結婚をして、今年から村長を継いでいる。
オルガに村長を押し付けようとしたシンシアだったが、オルガは移住者のため村長としての信頼がまだ足りない。
そのため、村長はシンシア。オルガが村長補佐として影から支えている。
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