第2話
「ってねー。その後ろ姿、めっちゃ面白かったよ〜」
今朝の男・・・『神官見習い』のことを笑いながら話してくれるシンシア。
「明日・・・」
「うん。『鑑定』って何するんだろうね」
「・・・・・・『痛くない』といいな」
「『聖女かも知れない』相手に『痛いこと』はしないでしょ」
「・・・だといいけど」
「大丈夫。大丈夫。『痛いこと』だったら、ここのみんなが黙ってないから」
「うん。そう、だね」
「すみませーん」
「はーい。いま伺いまーす」
窓から声をかけられて、シンシアが『窓口』で話を伺う。
私の
私は症状を聞いて薬を調合する。
・・・村の人なら平気だけど、『それ以外』の客が怖くてダメなのだ。
まだ母と二人で営んでいた頃は平気だった。
しかし・・・母が死んでから、どうしても怖い。
悩んで、店を畳もうと思っていたら、シンシアが『押しかけ受付嬢』になってくれた。
この村にある薬屋は私の所だけなのだ。
そのため『無くなったら困る』とシンシアに説得された。
「レリ。ニーナさん所の『いつもの薬』」
私がいる薬草を干してる部屋にシンシアが顔を出してメモを見せてくれる。
ニーナさん家の長男シュリは、生まれつき喘息持ちで、定期的に薬を貰いに来る。
個別に付けているノートを確認すると、前回渡した時より7日遅い。
「ニーナさん」
「ああ。レリちゃん」
ニーナさんは奥の部屋から顔を出した私に気付き、周囲を見回すと「大丈夫。誰もいないよ」と笑ってくれた。
「えっと・・・。薬を貰いに来るのが前回より7日遅いのですが」
「ああ。シュリの発作が少なくなってきてね」
「咳は弱くなりましたか?」
「そうだね。一時期と比べるとだいぶ弱まったよ。私らの『軽い風邪』の咳に近いかな。レリちゃんが『大きくなると治る』って言ってくれた通りだったよ」
「じゃあ、『いつもの』を3個と『弱いもの』を10個。『いつもの』は『咳が酷い時』用。という形でいいですか?」
「そうしてくれる?じゃあ昼に貰いに来るよ」
「はい。それまでに用意します」
ペコリと頭を下げて、また奥の部屋へ入ったレリーナ。
それを見送ると、それまで
「レリちゃんの様子は?」
「今日はちょっとムリっぽい」
「そう。せっかく『良くなってきた』のに」
「それより。『明日』が問題だよ」
「あの『バカ親子』も出てくるんでしょ?ほんと『どの面下げて』私らの前に出てくるんだか。今から『そのこと』で集まりがあるから。対策も立ててくるわ」
「お願いします。今日は多分、『お菓子作り』を始めると思うから」
「じゃあ、お菓子を買いに来るようにみんなに伝えるよ。今日は『粉に挽いた小麦』をついでに持ってくるから」
「いつもありがとう」
「いやいや。私らはレリちゃんがいないと文字通り『生きていけない』からね」
そう笑いながらニーナは村長の家へと向かって行った。
村の中心に近いこの薬屋は、オルスタ村にはなくてはならない場所だ。
レリーナのおばあさんが『元・聖女さま』だったらしい。
当時
そして、数少ない『薬師』として『生まれ育ったこの地』に帰ってきたそうだ。
私たちはレリーナを『奪われる』訳にはいかない。
たとえ『帝国』が相手だろうと。
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