第30話


事前にクラフテラ国から、追加で第二王女の遊学を申請していれば問題なかっただろう。さらに、国境で『許可なきものの越境を認めず』と入国が認められなかった時点で謝罪して事後承諾という形で遊学の打診をしていれば認められたはずだ。実際、トルスタインたちには『クラフテラからの遊学は第二王女と第三王女の二人になる』と伝えられていたのだから。

しかし、半月の間国境の街で足止めされていたにもかかわらずクラフテラ国からの返答はなかった。そして、第三王女の編入は正式なものだったため、特例として越境を認めた。もちろんクラフテラ国へ第二王女の遊学申請書を送ると共に『返答なき場合、我が国の法にのっとって裁くこととなる』という一文を添えて。


それでも、まだ『常識のある王女』だったら違っていただろう。不手際を詫び、招き入れてもらった礼を伝えていれば変わっていただろう。

─── それをしたのは第三王女だけだった。

自分の遊学を認め招いてもらったことに礼を。姉や母国の非礼に対して謝罪を。

その姿は、幼いながらも清く美しかった。


「勉学だけでなく、かけがえのない友と呼べる相手と出会い、今しか出来ない経験を楽しむがいい」


「はい。国では得られぬ様々な経験が出来ることに感謝します」


第三王女は編入前テストを受けて、特別科に編入が決まった。

しかし、第二王女は編入前テストを受けなかった。


「ただ『クラスを決めるだけ』でしょ。私は王族なのよ。特別科が相応しいに決まっているじゃない」


第二王女は最後まで知らなかった。『普通科が相応しい』と見做みなされていたことを。

自国で許されたことでもゼリアでは一切許されないことを周りにいる侍女は伝えたが、第二王女は聞こうとしなかった。


「私は王女よ。何をしても許されるのよ」




残念だが、ゼリアでは通用しなかった。

通用しないからこそ、『現王の弟』は処刑されたのだ。


・・・そのことは国外でも知られていることだった。

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