『ストーン変人』

やましん(テンパー)

『ストーン変人』

 * これは、いっさいこの世とは関わり合いのない、架空の世界のお話しである。また、科学的な考察は、なされておりません。



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『・・・人類が、約千種類の人格モデルを決め、すべての人は、そのどれかを選ばなければならなくなったのは、すでに500年ほど前のことである。


 選択は、『地球国家資格』を持ったアドバイザーと相談した上、本人が決定する仕組みである。


 その選択は、15歳の夏に行われる。


 それは、人生における、もっとも重要な『儀式』とされていた。


 『地球政府』から乖離した思想を持ち、その結果社会から隔離されたり、生活が崩壊したりするリスクを無くし、人類全員が楽しくこの世で生きてゆけるようにする。


 ある意味、きわめて、わかりやすい政策だったのである。


 もちろん、テロを防ぐという意味合いもあったが。・・・・・



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 ・・・『人格モデル』は、多くの地球地域社会や習俗、宗教を勘案し、その地域の有名人や人格者といわれる、しかも人格データが残っているここ800年間に生存していた人々の人格から、個人的記憶や情報を削除し、一般化したデータを、各個人に植え込むことで活性化されるのである。


 もっとも、いくらか地球政府に有益な最新情報が追加されることは、『公序良俗』を向上させる観点から、正当であると判断されていたのであった。


 古代にはあった『個人の尊厳』というような観念は、ここには、ほとんどなかったと言ってよい。・・・・・



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 ・・・・・ま、さらに、もっとも、世の中には、必ずと言って間違いない、『例外』とか『枠外』とか『範囲外』とか、そういうものが『公式』に、存在するものである。


 それは、たとえば、政府の高官だったり、財界の大物だったりも、するものである。


 このシステムにも、そうした『例外』的存在は、他にも、あったのである。


 それは、15歳までに確認された、『天才』的な能力が存在し、もし『人格モデル』を挿入すると、その『天才』の発揮が阻害され、かえって人類文明の進化に、悪影響を及ぼする可能性が高いと判断された場合などが、そうである。


 こうした『対象者』は、まず20歳になるまで、人格モデルの適用は延期される。


 そこで、再度、適用の可否が判断され、以降、原則二年おきに再審査されるのである。


 もちろん、必要性が生じれば、途中でも臨時審査が行われたのである。・・・



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 ・・・にもかかわらず、こうした『公的』な処置の、さらに『枠外』に存在するものが、発生することがある。


 地球は広いのだ。


 すべての『人類』は、地球政府によって掌握されているはずなのに、ときに、異常な存在が現れたりする。


 『変人』と呼ばれる存在である。


 大方は、それでも、『人格パターン』の後付けは可能なのだが、なかに、通常の処置を受け付けない、とんでもない『変人』が出ることがあり、『スーパー変人』とか呼ばれた有名な事例が、いくつか発生していた。


 政府は、特殊な技術を開発して、それに、対応した。


 その中でも、まったく、政府の選んだ『人格』を受け入れない、また、どのような特殊な『処置』にも反応しない、個人の『独自性』を、まったく放棄することが『できない』、おそるべきミュータント個体が現れたのである。


 『超スーパー変人』とか、あまりに石頭だという事から『ストーン変人』と呼ばれた、ある女性が、その代表例である。


 彼女は、最終的に『人格付与中央コンピューター』の機能を破壊してしまい、70年間ほど停止させてしまった。


 結果、おおくの、『非人格付与人』を生み出させたのである。


 そうして、新しい勢力を築き、ついには、地球の歴史を、ひっくり返すこととなったのである!


 そう、彼女こそは、我々『ストーン変人党』の第1代リーダー、『ヒピメカ』その人なのである! 我々は、個人の人格を守りつつ、さらに、進軍を続けなければならないのである!・・・・・』




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 『これは、1億年ほど前の地層から発見された、不可思議な『結晶』から、ようやく読みだされたデーターの、一部分であります。多くの部分は、まだ解析出来ておりません。おそらくは、なにかの、『パンフレット』とか、『教科書』のようなもので、ありましょう。』


 教授は言った。


 『このあと、人類は、長きにわたる『暗黒大乱時代』に突入しました。巨大なエネルギーが放出されたらしき跡や、人工的なものらしき放射線の痕跡が残る地層が、あちこちで発見されてはおりますが、具体的な資料は、ほとんど何も、残っておりません。大陸も大きく移動したと考えられております。じっつに、これは、はじめてあらわれた、貴重な『資料』なのです。・・・なぜ、『古代ごきぶり族』と『古代人類』が融合したのか、その研究は、まさに始まったばかりなのです。』


 大きな真っ黒な羽をばたつかせながら、教授は考え深げに、発達した前足を組んだ。


 聴衆も、深く考え込んだのである。



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                          おしまい




 



 
















 















 



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『ストーン変人』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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