おっさんと料理教室 ニ品目『おみそ汁』

 俺はとりあえずサプリメントの工場で、短期のパートにようやく就けた。


 はっきり言って就職活動は厳しい。


 たかがパート?

 冗談じゃない。

 何社面接したと思っているんだ。


 それにメチャクチャこき使われる。

 男ってだけでさ。


 社員になりたい。

 無理だけど。

 もうなかなか社員として採用される年じゃないんだと。


 俺は心が折れた。


 面接のたびにパキパキと心は折れていった。

 心の骨折だ。


 短期だが立場が上の方の社員に気に入られたら、契約期間が延長になることもあるらしい。



 友達からお古の炊飯器をもらった。

 彼は新しい炊飯器に買い替えるとこだった。

 ラッキー!

 持つべきものは友。


 あれから俺はすっかり炊きたてご飯の虜になった。

 おかずは相変わらずスーパーかコンビニのお惣菜だけどな。

 格段に食のレベルがアップした気がする。




 こんにちは、先生。

 二回目の料理教室だ。

 

 授業が始まる前から、美人の先生の前には人だかりが出来ている。


 鼻の下が伸びた男どもめ。

 いやらしい。

 って俺もだけど。


 おいおい。

 80歳のじいさんは積極的だな。

 麗しき先生のそのシラウオのような手に握らせたのは映画のチケットじゃねえか?

 気軽に先生のお手に触れるな。じいさん。

 先生が困ってるだろう?



 授業が始まった。

 今日は出汁の取り方だ。

 そしておみそ汁を作るんだってさ。


 みそ汁か。

 即席で充分。

 変わらねえだろ?


 出汁ってやつは面倒くせえな。

 昆布は水から、鰹ぶしはお湯が湧いてから。

 さっと取り出すとか。

 しかも、出汁とりって鰹ぶしをすごい量を使うのな。

 

 だが……!


 うっうまーい!


 試しに飲んだ出汁のなんと美味いこと、美味いこと。


 出汁は澄んでいる。

 美しい。

 これはハマる。


 味噌は、手作り味噌を使う。

 女優さんのように綺麗な先生の丹精込めた(であろう)手作り味噌を使いました。


 具はシンプルに豆腐とわかめです。


 たいへんに美味でしたね。

 俺は何杯もお代りして、お腹がたぷたぷダブンダブンしてます。



 先生、さようなら。


 また来週〜♪




 

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