おっさんと料理教室

天雪桃那花(あまゆきもなか)

おっさんと料理教室 一品目『おにぎり』

 おっさんの俺は独り暮らし。


 一昨年おととし、カミさんに捨てられました。


 会社も、リストラに合いました。


 でも、生きてます。


 一生懸命に生きてます。


 趣味もなかった俺は、駅前のショッピングモールの中の『男のための料理教室』に通い始めました。


 はっきりとここで言っておきますが、料理教室に通い始めた動機は不純です。


 下心ありまくりです。


 イヤらしい気持ちです。


 ただ料理教室の先生が美人だったからです。


 決して健康を気遣ってとか、料理を上手くなりたいとかではありません。


 断言しましょう。

 

 料理教室の先生が若くて美人だったからです。


 良いじゃないですか。


 ささやかな楽しみが、あったって。


 不幸な俺にだって、あっても良いじゃないかぁっ!



 ◇◆◇


 

 こんにちは、先生。

 今日は初めての料理教室の日です。


 人生で初めてお米を炊きました。

 

 コンビニ弁当ばかり食ってます。



 炊飯器は家にありません。


 元奥さんは家中の物を持って、出て行きました。


 ニ年前のある日のことでした。

 玄関を開けたら、離婚届が壁に貼り付けてありました。



 



 さて、料理教室の生徒は20人です。


 5人ずつのグループを作りました。


 生徒は20代から80代までいます。


 みんな絶対、若くて綺麗な先生が目当てです!


 

 炊きあがったお米は、おにぎりにしました。


 今日の授業は、炊飯器のつかい方でしたよ。


 それはもう有意義でしたね。


 炊きたてのご飯を食べたのはいつぶりでしょうか。


 美味しかったです。


 鮭と昆布と梅干しのおにぎりを食べましたよ。


 そうです。

 三つも食べました。


 いびつで特大のおにぎりでしたが、

 たいへんに美味でしたね。




 先生、さようなら。


 また来週〜♪


 

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