第8話 解放
部屋に着くとそこには白いカプセル型の椅子のような装置が2台並んでいた。
「これはブレインリリーサーという機械だ。」
川上はそれぞれ順番に入るように言った。一組目がそのブレインリリーサーに入った。
するとカプセルの扉はゆっくりと締まり装置が動き出した。10分後装置はプシューという音とともに止まり中の人が出てきた。
「気分はどうだ?」と川上が聞いた。すると
「なんか頭がジンジンするけどそれ以外はなんともないよ。」と一人が答えた。
もう一人も大丈夫なようだ。
「そうか。よかった。じゃーあの人のところのもとに行ってくれ。」
川上はそう言うと奥に座っている女性を指さした。
ブレインリリーサーに二組目が入った。栞奈と零は三組目、俺とハリスは五組目と分けられた。
俺は黙って待っているのもひまなのでさっきの二人の様子を見ることにした。
女性の名前は神崎奈々なんでも超能力者で見ただけで他人の能力がわかる能力らしい。
「んー君は念力ね。」「あなたは火ね。」と能力を告げる。
すると、ボォゥッとという音とともに一人の手から火が出ている。
(え、うそ、手から火出てる…)
そー驚くことになんと神崎の宣言通りそれぞれの能力がおそらく解放され能力が発現したのである。
「ねぇ!すごいね!」と栞奈が子供のようにはしゃいでいる。と、
「おい、次橘だぞ。」と川上に呼ばれる。
「おい、栞奈いくぞ」と零にも言われ少ししょんぼりしながら栞奈はブレインリリーサーの中に入った。
10分すると二人とも出てきた。
「気分はどうだ?」
「あー大丈夫だ。」
「楽しかったよ!」
頭のおかしいことを言っているのはお察しのとおり栞奈だ。
神崎は零を見て「あなたは水よ」という。
「水か、悪くない。」
静かに右手を広げると瞬く間に大量の水が現れ、浮かび上がり零の目の前で丸く止まっている。どこからその水はきたんだ?出したのか?それとも空気中の水分を凝縮させて零の手の平にあつまったのか?わからない。すると零が右手を勢いよく横にふった。
次の瞬間、シュピッッツという音とともに零の手のひらの上に浮かんでいた水が手を振った方向に目にもとまらぬ勢いで飛んだ。
そしてその水は壁に斜めの傷をつけた。
いやいや、威力がおかしいだろ、高圧洗浄機の超強化版。某会社もびっくりだな、
それを見たクラスメイトはざわついている。まー素人目にもわかる威力だしなあ。
「零すごいな!」素直に感心する。
「お前はなんの能力なんだろうな。」零はニンマリしながら言ってきた。
零の今の能力の威力を見た川上はブツブツとなにかを言っている。
「次、栞奈!次、栞奈!」と栞奈は子供のようにはしゃぎだした。
「はいはい。んーあなたは火ね。」と神崎は栞奈に言う。
「わーい栞奈火だー!」と言いながら、えっとえっとと言いながら手を広げて意識を集中させる。すると、
ゴォォォォォォォォ
けたたましい音とともに青い火というよりも青い炎があがる。
おいおい、前のやつに火のやつがいたけどこんなに大きくなかったし、色も青じゃなかったぞ。
「栞奈すごすぎだろ、」おれは驚きを通り越して呆れる。
「すごいね栞奈ちゃん」と笑顔のハリス。
ふと零を見るとなぜか零は悔しそうだ。
「バカな、」と川上は想定外だった時の100点満点の顔をしている。
そんなこんなしているうちに四組目がカプセルから出てきた。
「よし、、、残るは、、、、不二と西園寺」と、疲れた口調で川上は言った。
俺とハリスは言われるようにブレインリリーサーの中に入った。
中はうす暗かったが椅子の座り心地は最高だった。そして川上の「しめるぞー」という声とともに職員に指示を出しカプセルはしまった。
すると起動音がした。[ブレインリリーサー起動]という女性の合成音声のアナウンスが鳴る。
それと同時にキィィィィィィィィィィィィィィィイィィという高周波の音が言葉の通り耳を襲う。
(うるせえ!)
少しすると上から降りてきた装置が俺の頭をホールドしたかと思えばすごい勢いで振動し始めた。
(やばい、きもちわるい、)脳が揺れているのがわかる。
(栞奈のやつ!何が楽しかっただよ!)
栞奈に文句を言っていたのも束の間、脳しんとうを起こし俺は意識を失った。
目が覚めたと同時にカプセルが開いた。どうやら終わったらしい。
「気分はどうだ?」川上だ。
「平気です」とハリス
おいおいまじかよ、
「なんとか大丈夫です。」とおれは言った。(正直危なかった、、、)
そして、みんなのように神崎のところに向かう。
「あなたは電気操作ね。」という。
ハリスは「電気かー、」というと同時にバチッバチバチという音とともに手が放電し始めた。
最後は俺だ。神崎は俺を見ては数秒凝視して首をかしげる。
「ごめんなさい。あなたを見てもなんの能力のイメージも見えないわ。」
(は?え?そんなことある?零も栞奈もほかのみんなも能力あって俺だけないとかある?)
すると川上が駆け寄ってきた。
「不二お前に超能力はないようだな、悪いが弐組か参組に移動だ。」と冷えきった言葉をかける。
「悠希、、、」栞奈が悲しい顔をしている。
(ふざけるな、なんでおれは出ないんだよ。俺だって栞奈のみたいな火とか零みたいな水
使えてもいいじゃないか…)
(どうしてだよ、どうしてなんだよ、ふざけんなよ!!!)やみくもにも手に意識を集中させてみる。
(神はなんて理不尽なんだよ、くそ、頼むよ、)
次の瞬間俺の右手から大きい青い火が出た。
「やった!俺も火使える!」
おれは思いもよらないうれしさのあまり人生史上最大級の大声がでた。施設内におれの声だけがこだまする。
(なんでみんな黙ってるんだよ。)
ちらりと川上を見る。
川上はおれを見たまま口が開けて動かない。みんなも唖然としている。
理由がわかったのは神崎の言葉だった。
「君…ひ、左手、」
(ん?左手?別に何とも…栞奈と一緒で右手と同じ青い炎だろ?)と神崎の言ってることが理解できないまま左手に目をやると左手の上に大量の水が浮いていた。
(ん?炎じゃない、なんだ?これ?水?)
「なぜだ、なぜ君は二つの能力も使える。」と川上は叫ぶように俺に聞く。
「いやそんなこと言われても、俺にもわからないです。」。
一番なんでと思っているのはおれだよ、
そして意識を薄め炎と水を消す。
周りは驚きのあまり誰も言葉を発さなかった。
すると「悠。きみはすごすぎるよ!」とハリスは言い、そして俺となぜか握手した。
その時おれ脳になにか流れ込んでくる違和感を覚えた。
そんなこと今は関係ないか、
「先生。もしかするとおれの能力は炎と水を操る能力なのかもしれません。」
「たしかにそれだとさっきのことは説明がつくな。だが、、、」川上はなにか引っかかってるようだ。
「どうして君たち二人は他の生徒と比べて能力の出力が大きいんだ、それを同じ出力で同時に出すコ能力という稀有な能力者。それには高度な演算が可能な優れた脳が必要なはず、たしかに君たち三人は学力テスト満点合格だが、、、君たち三人はなにか共通点でもあるか?」
川上は俺と零と栞奈を見ていった。
「俺らはメーティスの箱庭という孤児院からきた。」零は言った。
「そうよ。私たち三人は家族なんだよ。」栞奈は満面の笑みで言う。
それを聞いた川上は今までで一番驚いた顔になった。
「ま、まさか君たちは[ガーデン]出身者だったのか!?」
「知っているの?」と聞いてみた。
「ああ、国の重要機関に携わっている人間の中では有名だ。なんでも昔から優秀な人材は大抵がガーデン出身者なんだよ。」
どうやら有名らしい。なんでもガーデン出身者は高い知能と処理能力をもっており高速かつ並列的演算が可能な脳を幼いころからの英才教育により培われる。もちろんそれは俺たち三人も例外ではない。
もしかするとそれは照じいからの親のいない子供たちへのささやかな能力ギフトなのかもしれない。
(照じい、時に厳しく指導してくれたのはこういうことだったのか、)おれは心の中であふれんばかりの感謝で胸がいっぱいになった。
こうして鶯音高校の壱組の生徒全員が能力の解放リリースに成功した。
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