バントが出来ないと試合に負けるという説

 前回はバントそのものが試合で重要である、という事を記述しました。今回は試合の勝負の上で、バントの成功可否がどういう位置を占めるかについて考えます。

 私は前回、走者一塁の場合一番有効な策は「盗塁」であると記述しました。しかし打者が器用で、確実に走者をスコアリングポジションである2塁に進める策としては「送りバント」が有効であるとも考えます。ただ「確実な進塁方法」と目されている作戦だけに失敗した時の代償は大きいと言えます。

 具体例を提示します。0死1塁で送りバントが成功すると、1死2塁です。併殺の可能性もありません。この時点で打者2人(または3人)のうち、2塁走者を本塁に返せれば1得点となります。おおよそ1/2人でヒットが1本出ればいいので、確率的には50%の確率でヒットを打てばよいということになります。(これは単純な確率です。また0死1、2塁は除外します)

 方や送りバントを失敗した場合、1死1塁になってしまったパターン(走者がアウト、打者はセーフ)などは、進塁させるべき塁が1つ増えるわけです。そうすると、次の打者が仮に1塁走者を進塁させたとします。その場合、2死2塁または1死1、2塁な訳ですが、特に前者の2死2塁は、1/1人でヒットを打たないと得点はできません。という事は「次の打者は必ず出塁しないと得点できない」という状況になるわけです。また、1死1、2塁は一見良さそうですが、併殺になりやすいケースであることは否めません。

 ここで送りバントが成功した場合と、失敗した場合の後続の打者への負担度合いを考えます。

 送りバントが成功した場合、後続の2人の打者のうちどちらか1人がヒットできれば得点できる可能性があると記述しました。しかも1人目の打者が凡打であっても3塁に走者を進めることがあり、2死3塁。高校野球等では場合によってはパスボール等の相手の失策で得点につながります。

 一方、送りバントを失敗した場合、後続の2人の打者で「走者を2塁まで進めることが必須」かつ「2アウトになった場合、後続打者が出塁することが必須」になるのです。

 この二つを比較した場合、<たかが>送りバントが成功したか否かで後続打者への(出塁すべき)負担が違うため、得点のしやすさの違いも覿面です。これだけ見ても送りバントを確実に成功させるという事がいかに大事な事かという事が分かります。

 NBLやMLBでは送りバントは軽視されがちです。それはヒットが打てる「であろう」という公算の上で試合が進んでいるからです。それどころか、日本のプロ選手でさえまともにバントが出来ない選手が何と多いことか。大変嘆かわしく思います。普段から練習していない賜物なのでしょう。しかし、どんな偉大な選手であろうと送りバントをせざるを得ない状況がないとは言い切れず、大体そういう場面が皮肉にも回って来て試合を落とすというケースは意外とあるものです。

 かく言う私もバントの練習を軽んじてレギュラーの座を得られなかった苦い経験から考える事であり、元巨人の川合昌弘氏の偉大さを改めて考えていただきたいと思う次第でもあります。

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