イチロー氏が「一番難しいのは走塁」と語っている意味合い

 確か「Number」という雑誌の記事だったか記憶はあいまいですが、表題の通り、イチロー氏は野球において「走塁」が一番難しいと言っていた記事を見た気がします。私は最初おっ?と思い、意外でした。

「うーん、ちょっとピンと来ないな。自分は守備だと思うけど」とその記事を読みました。

 所詮私は素人、方やイチロー氏は誰もが知る野球界のレジェンド。そりゃ着眼点が違うわな、と思ってスルーしたらそこで終わり、とはその時思いませんでしたが気になっていました。後にその言わんとしていることが分かった気がしました。

 先日、母校の春季大会予選を見に行きました。私の母校は毎年、夏は良くてベスト8、16止まりの結果です。私は夏より春の試合を見に行きます。夏は結果でしかないからです。春は「自分たちの見直すべき問題点」を発見し、フィードバックする時季だと思っているからです。

 一回戦、相手は県でも離れている地区の高校。意外と地区によって若干野球の

質が違います。試合前の様子を見ていると選手個々のセンスがよさそうに見えました。しかし、ふたを開けたら大差で母校の勝利。ですが、内容は相手ピッチャーの制球難が原因の勝利で、ほぼほぼ「ごっつあん」勝利です。

 私は試合の結果は重視しません。それより試合の中で「勝因と敗因は何か?その原因は何か」を見つけ、具体的に修正案を考えます。

 さて、走塁の話に戻ります。そもそも野球は「打たなくても勝てる」ゲームです。という事は、打撃、守備、走塁のうち、打撃は重要であるという観点から外れます。

私は守備、イチロー氏は走塁が残ります。

 私は先日の試合を見て、その意味合いが何となくわかりました。それは両チームの選手が「走者の重要性」をわかっていないという事です。

 まず、「走者」になるには(当然ですが)アウトにならない事ですが、出塁することが重要であるという意識が薄いかったのです。また、ホームランを除いて「走者にならないと、走者を出さないと得点できない」のですので、出塁する手段は何もヒットを打つばかりではありません。振り逃げ、四球、失策でもいいわけです。仮にいいピッチャーでカウントが不利になったとき、自分がアウトにならないためにはどうすればいいか?打力に自信があればそのまま打てばいいし、自信がなければ粘って四球狙いででもよし、守備に穴があるのであればそこに敢えてねらって打つなど、一打席個人個人が「出塁する意識」があるかないかで試合内容ががらりと良くなります。私は仮にそういう努力をしても相手を攻略できなかったのであれば拍手を送りたいです。

 二番目に「次の塁に進む、または走者を一つでも先の塁に進める」という意識も薄いという点です。これも、個人個人の持つ意識によって改善されます。例えば無死一塁で出塁したとします。走者は次の塁に進塁するためにはどうするか、まず最大限にリードを取る。これは至極当然の常識と思われがちですが、大抵俊足のランナーだけがこの意識を持ち、他の野手は意識が薄いはずです。NPBの試合では顕著に現れています。だれが走者であれ、投手、場合によっては捕手から牽制球をもらうような「いやらしさ」を与えればそれは警戒せざるを得ません。それはひいては投手の制球ミスや捕手の動揺を誘い、たいしてヒットを打たなくても労せず得点することが可能です。

 足の速い走者は上記の意識より一つ上の「いかにして盗塁するか」を常に意識する必要があるでしょう。投手の走者への意識はさらに高まります。まずは大きなリードを取る。そのためには投手の牽制球を多くもらう、癖を見抜くことが必須です。また、捕手の肩の強さを練習時にチェックしておくなど、難しいことではないですが、それ故おろそかになりがちです。

 二塁・三塁走者は「いかに本塁を陥れるか」を常時意識する。この意識が一番重要です。なぜなら「本塁に生還できないと得点にならない」からです。二塁走者はワンヒットで生還するという意識を持ち、隙あらば三塁に留まらないという考え方が必要です。リードも一塁よりも戻れるくらいギリギリに多くとり、たとえ内野ゴロでもちよっとのエラーでも本塁を狙う、だめなら打者走者を助けるような走塁をするなどを

役割として持つことです。言うなれば一番重要な走者でしょう。

 三塁走者は得点の可否が問われる走者。是が非でも本塁を陥れるという意識、一番ありうるのはバッテリーミス。少しでも捕手が後逸することを念頭にすることが必須です。安打なしで得点が可能です。仮にそれで三塁走者が本塁で憤死してもいいと思います。走っておけば生還できたのに見す見す得点できない方がひどいです。内野ゴロ、タッチアップ時の外野フライに備えておくというのは言わずもがなでしょう。

 走塁は攻撃時だけでもこれだけの事を意識しないといけません。逆に意識するだけでかなり違います。その上で技術的なものが加わるわけです。走力は守備にも多大な影響を及ぼし、守備範囲拡大にはなくてはならない能力です。

 速い球を打つ練習の時間を走塁の練習、走力強化に充てるのも一考ではないでしょうか。「機動力野球」とは俊足走者だけのものではないと思います。

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