わたしの珍プレーのお話(2)
もう一つ現役時代に起こった事を書いてみます。
私の卒業した高校は「秋だけ」そこそこ強く、高校2年の秋季大会での好戦が目に止まったのか県の強化指定校に選出されました。要は「遠征費を出すから強くなるために対外試合してください」というものでした。そこで北陸地方遠征が組まれました。
普段ではお相手をしてくれない強豪校、富山の高岡商業、氷見高校、石川の星稜高校、金沢高校さん等との強化(練習?)試合をして頂きました。
余談ですが、星稜高校ではあの「松井秀喜」選手が1年生で、既にライトフェンスには「松井ネット」なるものが聳え立っていたと記憶しています。
ところで本題です。対戦校は失念しましたが、私がスターティングメンバーで選ばれた試合でした。その前夜、なんと右目のハードコンタクトレンズを洗面所に流してしまいました。ハードコンタクトなので替えは無く、眼鏡も持参していませんでした。私は相当動揺し床に就きました。
翌朝の試合前に「コンタクトレンズの片目を無くしたので出場出来ません」など恥ずかしくて言える筈がありません。恐らく口にしたら「はぁ?」とか言われるんでしょう。
仕方ないので左目だけコンタクトをして先発出場しました。監督さんや他のチームメイトにも事情を告げていません。試合は裏の攻撃だった為、セカンドの守備位置につきました。わたしは「打球が来ませんように」とひたすら祈り続けました。
野球とは面白いもので、途中で守備交代したポジションや、ノーヒットノーランの記録がかかっているときなど「球が飛んできませんように」と願っていたりすると何故だか打球が飛んでくるというジンクスがあります。野球の七不思議の一つでしょう。
その初回、そのジンクスに漏れずいきなりイージーなゴロが私の所に飛んできました。ゴロが来ているのは片目でも分かったのですが、はっきり見えません。と言うか、はっきり見える部分が右側、ぼやけて見えるのが左側という感じに自分では見えています。ボールが二つ見えている様な状況です。打球が自分の所に来る間、右目をつむったりもしましたが、捕球時にはもうその事も忘れています。
そこは勘しかありません。捕球するときグラブを下から左側にスライドしながら出しました。なんと奇跡的にキャッチできました。自分でもかなり驚きました。が、当然ゴロを捕球したら一塁送球があります。もう送球云々など頭に無いので習慣的に投げた様な気がします。なんとかアウトに出来ました。
その裏、監督さんが私に「お前、何であんな取り方するんだ?」と訊いてきました。私は正直に事情を話しました。すると監督さんは打順が2番だった私に無言で代打を送りましたとさ、というお話です。
私はしょげるというより奇跡的に捕球できたという「勘違いの感動」に浸りながらベンチを温めました。
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