第4話 宿屋ミネギシ


[勇者トロ レベル5]

[賢者ドロシー レベル6]

[お金 2120EN]



 あれからマッソーの筋肉芸&海パン芸を延々と見せさせられ、俺とドロシーは疲弊していた。

 あまりに面白くないので「おもろないなあ」と言うと、マッソーは硬直し涙を流し始めた。

「マッソー?」

「留学 すーる!!!」

「ちょ、ちょっと待て!」

 マッソーは海パン一丁でダルイーの酒場を飛び出す。

 後を追いかけようとするが、そのスピードは速かった。



 M 



 夕暮れ時、俺とドロシーは宿屋を探していた。

「ここでいいんじゃない?」

「あー、宿屋ミネギシかあ……」

 俺が不満をこぼすとドロシーが「何かある?」と訊いた。

 頭を下に振り「ギシギシ音がするんだ。絶対一階には泊まらない方がいい。というか宿屋ミネギシには泊まらない方がいい」と返した。

「でも他はいっぱいだし……。トロの家はダメなの?」

(さ、誘っているのかああ!? ドロシーマジ天使様! だが俺の家は母ちゃんが許さない。母ちゃんはおそらく俺を中へ入れてくれないだろう)

「ダメだ」

「トロのお母さん関係?」

「ああそうだ……」

 二人は少し悩んだあと、宿屋ミネギシに泊まることにした。



 M 



 ギシギシ


 ギシギシギシギシっ!


 ギシギシギシギシギシギシギシギシっ!


「ちくしょーっ! 何で一階何だよ! 何でドロシーと別部屋何だよ!」

 二階からギシギシと音が聞こえる。何かが軋む音。

(そういえば、ドロシーは二階か……)

 悶々とするが、とりあえず目を瞑る。

(ドロシーのやつ、俺以外と……)



 M 



 一方その頃ドロシーは。

「普通の部屋よね。別におかしな所はないわ」

 部屋全体を見渡すけれども、ドロシーは特に違和感を感じなかった。

「強いて言えばこのトランポリンかな」

 ドロシーは最近増えた体重が気になり、トランポリンで飛び跳ねる。


 ポンポン


 ポンポンポンポンっ!


 ポンポンポンポンポンポンポンポンっ!


「きゃははっ! 楽しーっ!」

 ドロシーは無邪気に楽しんでいた。



 M 



 ギシギシ


 ギシギシギシギシっ!


 ギシギシギシギシギシギシギシギシっ!


「またかっ!」

 眠りにつこうという時に再びの嫌な音。そして


 きゃははっ! 楽しーっ!


「ドロシーよ、こっちは苦痛だよ……」

 満月の夜。二階からのギシギシ音に耐えながらも俺は浅い眠りに着くのであった。



 翌朝、俺はドロシーのビンタで目覚めるもなぜかHPが回復していなかった。



[宿屋ミネギシに 10EN を支払った]

[お金 2110EN]



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る