意味もない研究
「この、薬草とこっちの薬草を合わせて…」
僕の見解が間違ってなければ、ナムル草とナナフシ草を合わせて、そこにヒテクル草を入れて魔力を微調整しながら注入すれば……。
「よし、早速試そう」
机の引き出しから小槌を取り出す。この小槌は純度九十パーセントの鉄で出来ている。今の技術では百パーセントは無理でこの九十パーセントが限界なんだ。
それを大きく上に振り上げて勢い良く下に振り下ろす。振り下ろした先には自分の腕がある。そして、俺は小槌で腕に打ち付けて折った。
物凄く痛い。泣きそうになるが我慢だ。
「よし」
「よしじゃない! 何をやっているの?!」
「骨を折っただけだけど」
「いや、だから、何でそんな事をしてるの?」
「薬を試す為だ」
「薬?」
さっき作った薬を試す為に骨を折ったに過ぎないのに、何でそこまで驚くんだ? 研究者なら自分が作った物は試したくなるもんだろ。いや、彼女は研究者じゃないから分かんないのか。それなら仕方ないのか。
ごくごく。うげぇぇ、ニガッ! これも改良だな。でも、痛みは無くなった。それに折れた腕も動く。成功………はは、やった。やっと出来た。でも、まだ一歩前進しただけ。これからだ。
「はあぁぁ。よし! ティア、出てってくれ」
「え。何で?」
本当は居る事事態が可笑しいのだが、言っても聞かないからもう気にしない様にした。
「集中したい。後少しで完成するかも知れない」
「………居ちゃ駄目?」
「駄目」
はっきり告げると顔を俯かせてしまった。ちら、と視線が此方に視線を送る彼女の目は潤っており今にでも泣きそうだ。
反則だ。そんな目をされてはこっちが悪いみたいじゃないか。くっ、でも一人で集中したい。だが、可哀想………。うーーーん。
「………分かりました。終わったら声を掛けて下さい」
ん? あれ、さっきまで泣きそうだったのにもう凛とした何時もの表情に戻ってる。まさか、こいつ、嘘泣き………。いや、考え過ぎだな。あれは彼女の本心だろう。
彼女は出て行き、部屋には僕一人になる。久しぶりの一人での時間。うーん、ティアが来て何れぐらい経ったっけ? 一週間かな。多分、それぐらい。いちいち日付なんて確認したりしないし、研究に集中してると時間なんて圧倒言う間に過ぎて行くから何時日付が変わったのかも分からない。
「さて、やるか」
棚から様々な薬草を取り出して行く。それを机の上に並べたら、後は組み合わせて行くだけ。ちゃんと考えてからやってるから無駄がない様にはしている。
石臼に薬草を入れ、後は棒状の石を使い擂り潰して行く。
砂粒ぐらいなったら、一摘みしてぺろ、と舐める。
「ぐっ………!」
苦々しい味が口に広がる。うぁあ、吐きそう。でも、これにあれを入れれば苦味は消え失せる。完全にな。
そんな素敵な薬草の名前は、ニガ草だ。
ネーミングは勘弁してくれ、自分が分かれば良いんだ。どうせ、俺しか使わない薬草だし。
これを混ぜると不思議と苦味が消えて毎回苦々しい薬が無味となって最初よりは飲みやすくなる。だが、それでも最初よりマシになるだけで後少し手を加えるだけでかなり飲みやすくなる。
一つ硝子瓶を用意する。縦長く下は丸くカーブしている瓶だ。そこには既に水が入っている。
これは、普通の水とは違う。魔力を微調整しながら注ぎ作った魔法水だ。うん、名前はほんとに適当に付けたから勘弁して。
それに、さっき調合した薬をまた調整しながら入れる。少しでも分量を間違えるとそれはもう薬では無くただの水になってしまう。それじゃあ意味がない。
「よし、出来た~」
これは本当に神経を使うから体力の消耗が激しい。
「よし、またやるか」
もう一度小槌を取り出して自分の腕を折る。痛いに決まっているが試す為なら致し方がない。言っとくけど、どMじゃないからな? これは試す為に致し方なく! やっているんだ。
「………はは、成功か」
完全に折れた腕は治り、痛みも無い。味もスッキリとしていて飲みやすい。
だが、終わりじゃない。忘れない内に作成方法をメモらないと。
メモを書き終えた頃………、
「え。あ………」
身体から力が抜けて地面に倒れ込む。
あー、身体もう限界なのか。でも、これでまた一歩前進をした。今日だけで二歩は進んだからな、これは大きな進歩だ。今は大人しく………。
最後に、彼女、ルーティアの声が聞こえた気がした。
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