第23話 妹とお出かけは、久しぶりにだな

 学校の帰り道でのできことだ。


「ねぇ、お兄ちゃん。甘いモノ食べたくない。

 頭脳労働の後って、糖分が欲しくなるよねぇ」

 

 俺の少し前を歩く。


 清楚そうな黒髪を腰にまで伸ばし、真っ白なセーラー服の襟にはワンポイントで刺繍が入っていて、紺のプリーツスカートから伸びる美しい2本の脚を黒いストッキングに包んだ妹の二三が話しかけてきた。


「ああ、そうだな」


 それは本当に常人を逸脱した美貌で、神道系のお嬢様学校の制服がよく似合っていた。


 やっぱりお嬢様学校と言ったら『セーラー服』だよな。


 まあ、二三はお嬢様という柄じゃないけどな。 


「放課後のスイーツタイムとか憧れるよねぇ」


 二三は振りかえるとスカートがフワっと膨らみ、鞄を持つ手を後ろに組んで、少し前屈みに上目遣いで俺の顔を覗き込みカラダを寄せてきた。


 仮にも年頃の女の子だというのに、よく遊び、よく食べ、よく寝るを地でいく妹だ。

 

 健康的に焼けた小麦色の肌は、まるで太陽の匂いのする。


 その柔らかそうな頬を、ペロペロと舐め回してみたいな、というよからぬ妄想が頭のなかを過ぎる。


「しょうがないな。

 最近構ってあげられなかったし、いちごパフェでもおごってやるよ」


 俺はポンっと二三の頭の上に優しく手をおき、撫でてあげる。


「そんな優しいお兄ちゃんが、ワタシ大好き」


 ネコのように柔らかそうな髪をサラサラと風に靡かせ、まるでねこようにじゃれついてきたので


「コラ、抱きつくな。離れろ」


 この過剰なまでのスキンシップがなければ、カワイイ妹なんだけどな。


「もう本当は嬉しいクセ」


 可愛く笑いながら、俺のほっぺたをツンツンしてくる。


「お兄ちゃんは素直じゃないだから」


 右腕に抱きついてきた瞬間。


 髪からライムのような爽やかな香りがふわっと鼻腔をくすぐった。


 そしてふんわりと押し付けられる乳房の膨らみ。


「だ・か・ら、すぐに抱きつくな」


「お兄ちゃんたら恥ずかしがっちゃって、カワイイ♥」


 俺の心境に気付いた風もなく、二三は無邪気に声を弾ませ。


 周りの奴らに見せつけるかのようにわざと、俺の腕に胸をぎゅうぎゅう当てながら、どんどん歩き出した。


「コラ、兄をからかうな」


 なんとか振り解こうとしたが


「怒ったお兄ちゃんもカワイイ♥」


 妹はますます俺にひっついてきた。


 まるで恋人にでも甘えるかのようにカラダも預けてくる。


 なんだかんだ言っても、やっぱり妹は可愛いモノだな。


 日々美しく成長していく妹に、兄以上の感情を抱いたことがないわけではない。


 むしろそれは俺の心の奥底に少しずつ、確実に積み上がりつつあった。

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