第14話 ぱふぱふしたい!

 太一達が部屋に入ってから、数分間が過ぎた。


「マ、マスター。お願いがあるのです……。」


 優姫の様子がおかしい。何かに取り憑かれたように太一にあまえる。はじめは優姫独特の恥じらいながらのあまえだったが、次第に露骨にあまえるようになる。太一も、あまえる優姫にいつになく積極的にボディータッチを繰り返す。頭をポンポンしたり、頬を撫でたり。


「ちょっと、アイリス。一体どうなってんの?」

「もしかしてこれも『異世界ウオッチ』に描かれていたんですか?」


 あおいとあゆみは、急にあまえだした優姫に呆れながらも真剣に尋ねる。


「たしかに『異世界ウオッチ』にも似たような描写がありますが……。ま、まさか!」


 アイリスはそう言うと、テーブルの上に用意されていた水の量を確かめた。部屋に入った直後より減っているような気がする。あおいもそれに気付いた。


「もしかして、2人共この水飲んだのかしら!」

「何だぁ! 飲んで良い水だったんだ」


 あおいの発言は藪蛇だった。フードコートでは、振舞われたものに手をつけないように言われていたから、まりえは我慢していたのだが、もう限界だった。太一が水に手をつけたことを知り、がぶ飲みしはじめた。


「あちゃー。飲んじゃったぁ……。」

「ま、我慢すんのも身体に毒っしょ!」


 あおいが呆れている側から、今度はまことが水を飲みはじめる。だが、何も起こらない。それで安心したしいかも口に運ぶ。


「だから、飲んでも平気って言ったのに!」


 言ってない。しいかは何も言っていないが、反抗期のしいかがだから言ったじゃんと言っても、誰も疑わない。ところが、しいかは言っている側から太一にあまえだす。既に優姫以上に上手にあまえている。


「アイリス! どういうこと?」


 あおいが慌ててアイリスに確認する。『異世界ウオッチ』に描かれていた恐ろしい媚薬の正体がアイリスによって語られる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る