第11話 ドッグファイト

 用意された台の上、互いにお尻を近付けて並ぶ。掛け声に合わせてのドッグファイトこと、尻相撲。単純明快、台から落ちたら負け。腕力ならぬ、尻力勝負。穴圧の高い方が断然有利。ただし、押すか引くかの駆け引きも重要で、小さな力で大きな相手を落とすという番狂わせも充分に期待できる。もう誰も目が離せない!


「西方。赤の僧侶、マスター!」

「おぉっ、良いぞ良いぞー!」

「強そうな名前だ!」

「名前負けすんなよー!」


 レフェリー役の5つの尻尾を持った男が、出演者を紹介。観衆の声援が響く。事前に登録されていたシンプルなプロフィールが、大きな画面に映し出される。僧侶の登場に似つかわしい神聖な音楽が流れると、声援はさらに大きくなる。太一は素早く台の上に乗り、観衆の声援に応える。


 それに負けじと、今後は戦士らしい勇壮な音楽が流れる。プロフィールもよく作り込まれていて、凝り性かつ几帳面でユーモラスな人柄が伝わってくる。


「東方。白の戦士、たかたん!」

「おぉっ、良いぞ良いぞー!」

「美味そうな名前だ!」

「酔っ払うなよー!」


 たかたんは声援に応えるべく、腕を上げようとするが、上がらない。しかも、重い甲冑のため移動がままならず、用意された台の上に登ることができなかった。


 ーー勝者、赤の僧侶!ーー


 結局時間切れで、勝敗は決する。飛んだ茶番だ。しかも、たかたんが駄目なら他も駄目。太一1人で不戦勝を4つ並べて、あっという間にレッドチームの勝ち抜けとなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る