第5話 喧嘩上等! タコ殴りくん

 太一達は、フードコートへ足を運んだ。そこで4つ脚のアイリス達と合流する。


「鱒宮司、ずっとお待ちしてたんですよ」


 物語のあらすじを知るアイリスは、再会の場所と時間を気にしていた。このタイミングでここで会えたのは、かなり物語に忠実な行動といえる。高得点獲得も夢ではない。そして、喧嘩を吹っかけたのは、物語のあらすじ上、仕方がなかったと説明した。


「アイリス、じゃあやっぱりわざと……。」

「はい。あおい、怒らせてしまって本当にごめんなさいね」

「良いのよ。私も言い過ぎたわ」


 それからしばらくは、アイリスによる『異世界ウオッチ』の講義が続く。次はどこで再会するだの、それまでにはどんな行動をするべきだの、事細かな指示を出した。


「問題は、どうやって喧嘩するかなんですよ……。」


 入り口ではアイリスの機転でリアルに喧嘩することができたが、ここまでネタバレしてしまうと、次はなかなか難しい。アイリスは腕を組んで考えるが一向に良いアイデアは浮かんでこない。代わりにアイリスの爆乳が組まれた腕と胴の間から浮かび上がってくる。太一が考えるフリをしてそれに魅入っていると、まりえがはなしかけてきた。


「ねぇ、マスター! アレやりたい!」


 まりえが指差したのは、パンチングマシーン。『喧嘩上等! タコ殴りくん』とある。UFOキャッチャーやプリクラにはそれなりに行列ができているが、タコ殴りくんには誰もいない。何故かそこだけ閑散としていた。アイリスは何かにピンときたようだ。


「鱒宮司。まりえには思いっきり遊ばせてあげましょう!」

「もしかして『異世界ウオッチ』と何か関係があるんでしょうか?」

「ええ。『異世界ウオッチ』の喧嘩はほとんどが殴り合い。それもタコ殴り!」


 こうして、魔法戦士のまりえと魔法使いのあゆみによる、タコ殴り大会が行われた。どちらもハイスコアというわけではなかったが、次の順位情報が配信されると、アイリス達が1位、太一達が2位という結果になった。

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