第8話 『カルーアミルク』

 いらっしゃいませ。


 えぇ。前回は恋人から夫婦になった男女の話ですが……今回は男女の友情は成立するのか?について知りたいと?


 どうでしょうね。個人的には成立すると思いますが、人によって答えは違いますから、貴方なりの出した答えが正解でもあり不正解でもあるのでは?


 今夜はそんなライトな関係の男女についてでも、お話し致しましょうか。

 では今宵のカクテルは


『カルーアミルク』


 カルーア 30ml

 ミルク 90ml


 氷を入れたグラスに注ぎ軽くかき混ぜます。

 味はコーヒーミルクの様に甘口ですがアルコール度数は意外と高めです。

 女性に人気ですが気を付けて飲まないと、知らずに酔っていた。なんて事にもなりますから。




 ※※※※



「ねぇ。何で男って、女の胸の大きさを気にしすぎるの? 巨乳派か貧乳派か。とか形とかさ」



 カウンター席ではショートヘアでキュートな容姿をした女が男に不思議そうに尋ねていた。

 男はカウンターに頬杖をついたまま唸った。


「う~ん。何でだろ? 多分だけど男って視覚から入ってくる情報をより多く受け取る脳をしてるから、外見的に『胸』が分かりやすいからじゃね? 」


「なるほど。でも大体は巨乳派だよね。だから胸が小さい女の子は悩んだりバストアップするように色々と試したりさ……」



 男は頬杖を止めると椅子に凭れ、チラッと女の胸を見た。


「人に寄るだろ。俺は巨乳よりは小ぶりの方が良いかな。シンデレラバストだよ」


「今、私の胸をチラ見したでしょ? 『シンデレラバスト』? 笑わせないで欲しいわね『貧乳』は『貧乳』よ。それ以上でもそれ以下でもないわ! 第一シンデレラも胸がなかったら、ドレス着て舞踏会に行こうだなんて思わないわよ。絶対にシンデレラも胸が大きかったわね。そのご自慢の胸の谷間を強調させて王子を虜にさせたのよ。シンデレラが忘れたのは『ガラスの靴』何かじゃなく『羞恥心』よ! 」



 早口で捲し立てる女に男は苦笑いしたが、女は気に留める事もなく話を続けた。



「でもね。言わせてもらうけど男だって大きい方が良いと私は思うわ。これは私の個人的な意見だけどね」



「お前、酔ってない?」


「ぜっんぜん! 酔ってない」


 女は腕を胸の下に当て、横に座る男に身を乗り出す様に近付いた。

 男はドキッとしたように身を引いた。


「ほら。私だってこうすれば、胸があるように見えるじゃん! それに女は胸が大きい方が価値がある。みたいな風潮なら、男だって大きい方が価値があるじゃん」


「知らん。ちょっと近付き過ぎだから。って、お前は何処に視線をやってんだ! 」


 女は潤んだ瞳で男を見上げたかと思うと、今度は俯き男の下半身に目を向けた女は何処となくニヤついていた。


「何よ。外国の男は大きいって良く言うじゃない? 日本の男は小さすぎなのよ。あんたも小さいんでしょ」


「知らねーよ。第一、大きさよりも『形』や『硬さ』だろ? 」



 女は再度、顔を上げると舌で唇を舐めてから口を開いた。


「……それは小さい奴が誤魔化す為に言う言葉ね。そりゃあいびつだったり柔かかったら嫌だけど」


「だ だろ? それに持続力や回復力も大事じゃん」



 女は椅子に座り直し、自分の人差し指を唇で吸うと淫猥な音が漏れた。

 女は意味ありげに微笑んだ。


「まぁ……そうね。すぐに折れたり、ずっとしなびれているのも嫌ね」



「な? 胸もそうだけど男も大きいだけじゃ駄目なんだよ。男だって小さい言われたら傷付くし」


「そうよね。それは自信なくすわよね」


 女はクスクスと笑い出すと男もつられたように笑い出した。


「だから貧乳何て気にするな。男もだが形や弾力性の方が大事だ」


 女の笑い声はいっそう大きくなると、目に涙を浮かべ腹を抱えた。



「もうやめて! 限界、笑いすぎて腹が痛い!」


「何だよ。そんなに笑って」


「だって、途中から何かおかしいな。とは思ってたけど私は男の『器』や『メンタル』とかの精神的な部分を言ってたのに」



 男はポカンと口を開けたまま黙ってしまった。


「あぁ。おかしぃ~ 笑い疲れる。やっぱり男は視覚からの情報が大事みたいね」


 男は顔を赤くさせると何とか言葉を絞り出した。


「し 知ってたけど。俺も器の形や弾力性について話してました! 」



「もう 良いから。それ以上は喋らないで。『器』の弾力性って何よ? 別に貴方が大きかろうが小さかろうが、硬かろうがふにゃふにゃだろうが恋愛対象外だから」



 男は悔しさと恥ずかしさが込み上げて来たのかカウンターに突っ伏し顔を隠してしまった。


「まっ 貴方は羞恥心までは忘れてないようね。シンデレラサイズなのかは知りたくもないけど、男としての器は大きくした方が良いわよ」


 女は悪戯っ子の様な笑みを浮かべ、男の背中を軽く叩いた。



 ※※※※



 えぇ。おそらく女性は完全に途中から分かってて、わざと男性をからかってましたね。


『カルーアミルク』は先ほどお伝えした通りに、飲みやすいですがアルコール度数は高めなので、気付かない間に酔ってしまうカクテルでもありますから、デートや異性がいる際に飲まれるなら常に気を引き締めて下さいね。



『カルーアミルク』

 カクテル言葉は



『いたずら好き』



 見た目や仕草は甘く、それでいて悪戯好きな。小悪魔みたいな女の子には打ってつけのカクテルですね。

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