第5話 『テキーラサンライズ』
いらっしゃいませ。
えぇ、この時間は肌寒いですね。 なるほど、今日は熱くなるような話を聞きたいと。
そうですねぇ。熱くなると言いますか
では今宵のカクテルは
『テキーラサンライズ』
テキーラ45ml
オレンジ・ジュース90ml
グレナデン・シロップ2tsp
テキーラベースになりますがアルコール度数は低めで、オレンジの果汁感とグレナデンシロップの甘みがテキーラの苦味をマイルドにさせる飲みやすいカクテルになります。
※※※※
カウンター席では男女が並んでグラスを傾けていた。
仕事やペットなど様々な話をしていた2人の話題は、いつしかお互いの恋人へと移っていた。
「
「 そんな言い方は止めてよ。
里菜と呼ばれた女は眉間にシワを寄せると口を尖らした。
「でも、お前はそいつに時間も金も使いすぎだろ。俺のは放置すると面倒くせーんだよ」
玲央はスマホを片手で器用に操作した。
「だって好きなんだもん。玲央だって旅行の時にお金一杯使ったんでしょ? 」
「まぁな 旅先では結構使ったなぁ」
2人は見つめ合うと、どちらからともなく笑顔になった。
「なんで惚れたんだろ? 」
「俺もなんで、あんなやつにハマったんだろ? 」
里菜はグラスに口を付けると頬杖をしポツリポツリと話し始めた。
「 優しいし格好良いしイケボで『お前を守れるのは俺だけだ』って言ってくれるし、私の理想なんだよなぁ」
玲央も同じようにグラスに口を付けると頷きながら答えた。
「すっげー 分かる。あいつも俺の行動や考えに肯定してくれて励ましてくれるし。それでいて放置すると甘えてくるし、構ってちゃんなんだけど、そんなとこも可愛いんだよなぁ」
玲央はタバコを取り出すとジッポで火を付け、深く吸い込んでから煙を吐き出した。
「里菜は将来的にはどう考えてんの? 」
「別に……今はこのままで良いかな。みたいな。玲央は? 」
「俺もバカじゃないから、住む世界が違うのは分かってる。でも、出来るだけ一緒にいたい。だからこそ、あいつの地元にも行ったんだし」
玲央がグラスを揺らすと、カランカランとロックがグラスの中でぶつかる音が響いた。
「玲央 私さ。偶然あいつを見つけて、あいつに興味を持って好きになって、どんどん知りたくなって色々と調べたんだ……」
「言わなくても続きの言葉が分かる気がする。俺もあいつに惚れて、あいつの近くに少しでも行きたくて、あいつを身近に感じたくて……」
2人はスマホをカウンターに置いた。2人の間には2人にしか分からない空気が流れていた。
「まっ。好きになったもんは仕方ない。たかが次元が1つ下なだけで、誰かに迷惑を掛けてる訳でもない。俺はこれからも聖地巡礼は毎年行くしグッズやイベントでも金を使う」
「わ 私だって、あいつの住んでた城や使っていた刀にまで会いに行ったんだ。レベルだって私がMAXにまで育ててみせる」
置かれていたスマホ画面には萌系アニメの美少女と、ソシャゲのイケメン戦国武将が映し出されていた。
※※※※
最近はバーにやって来てまでスマホを弄るお客様も多いですね。
ハマるのは悪いことではありませんが、収入と支出を考えて楽しくですね。
テキーラサンライズのオレンジ色は朝焼けを意味してます。ソシャゲにハマると朝までやってしまう方もいらっしゃいますからね。
『テキーラサンライズ』
カクテル言葉は
『熱烈な恋』
次元が違かろうが可能性が0だろうが本人が良ければ、そっとして上げましょう。熱烈な恋をしている人の耳には何も届きませんから。
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