第4話 『ブルーハワイ』
いらっしゃいませ。
おや、雨が降っておりましたか。この季節はジメジメしてますからサッパリしたいものですね。
え? そんなサッパリした話を聞きにきたと。
いやはや、ここはバーですからアルコールと一緒にお願いします。
では最初からネタバレで『お風呂』にでも纏わるお話をサッパリと1つ。
まぁ お風呂と申しましても特殊なお風呂ですがね。
それでは今宵のカクテルは
『ブルーハワイ』
ホワイト・ラム 30ml
ブルー・キュラソー 15ml
パイナップル・ジュース 30ml
レモン・ジュース 15ml
これらをシェイクしクラッシュドアイスを詰めた大型グラスに注ぎ。パイナップルを飾ります。
鮮やかな蒼い色がトロピカルで梅雨の季節を飛ばして夏気分を味わえますよ。
※※※※
カウンター席には若い男女が並んで座っていた。男性はショートマッシュにふんわりとしたパーマをかけたホストらしき身なりであり、隣に座る女性は、あどけない可愛らしい顔に、ナチュラルメイクで清楚ながらも、タイトスカートやトップスの適度に開いたデコルテ見せや佇まいが、夜職の雰囲気を醸し出していた。
「なぁ。頼むよ! お前、俺のこと好きだろ? 」
男の懇願に女は困った表情を浮かべ俯きながらも頷いた。
「だったら頼むよ。俺はもっと金を貯めて、お前との将来の事とか考えてるから」
「本当に? じゃあ、私は本命で良いの? 」
女は俯きながらも視線だけは上目遣いに男を見つめた。
「当たり前だろ」
男は微笑むと女の頭に手を乗せた。
「だって前に女の子がディズニーに行って、高級料理食べて、高級ホテルに泊まったって、貴方との動画をSNSに上げてたもん」
「嫉妬すんなよ! 前にも言ったが、それは妹だ。俺にとっては大事な家族だし。片親だったから俺が小さい頃から妹の面倒を見てたんだぞ。大学通うのに一人暮らししてて、久しぶりに戻ってきたからだ。本命はお前だよ」
女の頭に乗せている手を動かし優しく撫でると、女は顔を上げた。
「信じて良いの? それで私が風呂屋に行けば貴方は喜ぶの? 」
この界隈で風呂屋と言えば…………男はその言葉に口角を上げてニヤリと笑ったかと思うと、女の手を握った。
「あぁ。お前だって金は大事だろ。金があればもっと俺と良い酒が飲めるし」
「で でも風呂屋なんて、どんな客がいるか分からないし怖いよ。それに貴方は私が風呂屋に行っても何も思わないの? 」
男は後一歩で思い通りに事が運びそうだと感じたのか、握っていた女の手を自分の口許まで持っていっては手の甲に口付けをした。
「そりゃあ 申し訳ないと思うさ。ただ我慢してくれ! それに俺を信じろ。潔癖症のお前だから仕方ないが、客を不快に思うのは最初だけで、すぐに慣れるし。なっ 風呂屋にしようぜ」
女がまだ決心しかねているのに、だんだんと男は苛ついてきたのか目付きは鋭くなっていった。
「じゃあ 別れよー。俺が本気なのに、お前がそんなんじゃ。もう良いや」
男は冷たく言い放ち、女の手を離すと立ち上がった。女は慌てたように男の袖を掴んだ。
「ま 待って! 分かったから。私が風呂屋に行けば良いんでしょ」
男は満足気な表情をすると座り直し、女を抱き締める。
「お前ならそう言ってくれると思ってた。客層も従業員も評判良いみたいな風呂屋だから安心しろ」
女は言った後に後悔したのか唇を噛み締めていた。
それに気付いたのか、男は先ほどと違う優しい眼差しと口調で諭し始めた。
「ごめんな。お前に苦労かけて……でも、俺も本気だから我慢して欲しい」
女は諦めた様に首を縦に振ると男は女のおでこに口付けをした。
女は目を閉じ口付けを受けとると静かに目を開いた。
「ねぇ。絶対に今度はハワイに連れてってくれる? 」
男は再度女の頭を撫でた。
「あぁ 約束する。久しぶりに妹に会ったもんで、思いの外、自分でも怖くなる位にめちゃくちゃ金を使ってしまった」
女は頬を膨らませ撫でられていた男の手の甲をつねった。
「バカ 久しぶりって言っても、半年ぶりに帰省してきただけじゃん。そのせいでハワイがスーパー銭湯になったんだよ」
男はつねられた手を擦ると、両手を顔の前に合わせた。
「ごめん。って、でも最近の風呂屋ってか、銭湯はデートスポットになる位に色々あって面白いからお前も気に入るよ」
「この、ドシスコン」
女は呆れたように呟いた。
※※※※
え? 良く分からない。ですか? まぁ お若かったり風俗系に興味もなければ無理もありませんね。分からなければ分からないでも構いません。
カクテルの方はいかがだったでしょうか。
えぇ ラムの甘い香りにブルーキュラソーの鮮やかな青い色は名前の通りにハワイをイメージさせますよね。もしくは入浴剤を入れたお風呂ですかね。おっと、飲まれている貴方に失礼でしたね。
『ブルーハワイ』
カクテル言葉は
『連想』
さて貴方は、男性が女性に言っていたのはどんな『風呂屋』だと思いましたか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます