戦予感の朝

 ミーメギーア遺跡から帰還した秀介と真琴を迎えたのは、ひたすら眠り続けるセシリア=マイゼン=ヴィトオリナであった。


 時刻はすでに夕刻。


 その夜は、どうしても目覚めないセシリアをそのままにしておいたから、秀介と真琴二人っきりのディナーとなる。


「まるで恋人みたいねっ♪」

 食後の果実酒に星を映しながら、スイートルームのテラスからの夜景を思う存分味わう空野真琴。


「さて……どうだかな」

 この夜ばかりは浅井秀介も空手の稽古を行うことなく、柄にもなくベンチに深く腰掛けてボーッとしていた。


 そのうちに寝間着姿の真琴が秀介の隣に入り込んで来て、昨夜と同じ優しい夜が始まることとなる。


 時々眠って、星の声に起きては一言二言会話を交わす。


 時々眠って、涼風に舞い踊る真琴の黒髪にそっと触れる。


 やがて東の空が明るんできた頃――二人の頭上を、五つもの巨影が通過していった。


 それが邪悪なる飛竜ドラゴンの編隊であることに気付いた真琴。あっという間に蒼天の嵐打ちアクトマライトに身を包み、暁の空へと出撃していった。


「おう……もう行っちまったか……」

 テラスに一人残された秀介は。

「ん~~~。どうにも真琴の奴と一緒だとよく寝れるな……情けないことだが」

 ゴキゴキと全身の骨や関節、筋肉を鳴らしながら伸びをする。


 そして振り返った視線の先には、テラスの出入り口。


 仁王立ちしていたのは、すっかり回復したセシリアだった。


 秀介が問う。

「稽古の時間か?」


 セシリアが応える。

「早く準備しろ。今日こそは一太刀入れさせてもらうぞ」

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