第2話 決意の源
変な人形に助けられて冷静になってから辺りを見渡すと、周囲の至るところに緑と視線があった。その視線に敵意は無かった。自然の大迫力に圧されていたが、ふと獣道を見つけてそこを進んだ。
清々しい空気を吸い込みながら散歩感覚で大森林を行く。五感で感じるもの全てが新鮮だった。
適当な果実をもいで食べてみると酸っぱくて不味かった。猿がくれた色の熟した果物を食べると甘くて美味しかった。熊に出会ったら、恐れずに胸を張っていると仲良くなれた。獣道を歩くのは大変だったので、近くを流れる川を見つけると、適当な流木に乗っかって川に流された。
魚がこの先に滝があると教えてくれた。
地上を行くと蝶が道案内をしてくれた。
日が暮れると、眠くなったので羊に寄りかかって眠った。たくさんの羊が寄ってきて体を暖めてくれた。
「羊さん。ありがとう」
そう言うだけで、みんな満足してくれた。感謝したくてもし足りない。
日が昇り沈む。それが十回目を迎えた時、アラタの旅は変化を迎えた。山猫がこう言ったのだ。「これから先を進むなら、みんなはアラタを助けられない。だから、頑張って。忘れないで、アラタは一人じゃない」慈しむような声だった。嬉しいのだが、同時に悲しい気持ちになった。もうお別れなのだ。
「本当にありがとうって、皆に」
「ふふ、アラタはもう、皆にありがとうって言ってるよ」
この旅の果ては"結界"だった。
結界を越えると、森のみんなとはもう会えない。アラタと未だに寝たきりのカグヤとの二人旅になる。
みんなの優しさは意思にかわる。
アラタは結界を越えた。
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