シューマン【森の情景】より【宿屋】

私は〝宿屋〟の一席に腰を降ろした。




こんな森の奥に佇む宿屋だが、意外と人が多い。


だが、どうやら旅人は私だけのようで、皆は慣れたような口振りをお互いに交わしていた。




木こりや狩人が翌早朝の仕事の為に利用しているのか、それともただ酒を飲み交わす為に通っているのか。


少なくとも、昼間に出会った狩人は居なかった。




私は気さくな彼等に呼ばれるまま、同席する事にする。




私が旅人と知ると、既に出来上がっている彼等は宿屋の主に酒を更に求めながら、ここらの仕事歌の合唱をしてくれた。


私はもう既に心身共に疲労に重たくしがみ付かれていたが、先程までの暗闇から開放された安堵からか私にはこの空間が楽しく仕様がなかった。




腹と共に酒をこの身に満たすと、私も朧気な声で彼等の歌を歌う。




彼等は本当に気さくで、私の故郷や旅の理由も様々聞きながら、自分達の暮らし振りも面白おかしく語ってくれた。


本当に楽しい空間だったが、私は次第に意識を天井の手前で漂わせるようになる。


彼等はこの森の話もたくさんしてくれたのだが、微睡みの中で私はその言葉の羅列を眺めていた。


そして、遂に私は眠っていたらしい。




宿屋の主に優しく肩を揺すられ、部屋に行けばベッドがあるんだからと笑われる。




私は共に酒を飲んだ彼等に礼と共に先に休むと告げて宿屋の部屋のベッドへ倒れ込んだ。






息を吐く。


私は幸せに眠る事にした。

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