第2話 フィルムを巻き戻して
知らない人なのに、疲れからか、似たような顔。押しておされ、最寄り駅に到着。
「あれー?
かくれんぼ。さらに遠くへ行こうと、不意に声がかかる。そういう緊張感に、足は捕まった。聞いたことのある、ハスキーな声が、奥で眠っていた思い出を繋ぎ合わせた。
「
「久しぶりだよね! どっかで飲まない? 用事ある?」
……たぶん、帰ったら夕飯が用意されてて、連絡入れりゃ大丈夫だと思うけど。
「……同棲または、結婚してるな? 連絡入れときなよ。変な心配させないように」
姉御肌は健在していたらしい。この感じ、懐かしい。
「立ち飲み屋があるらしくってさ。すこし話そうよ」
改札を出て、15分ほど歩いたところに……やっぱり居るのは、親父の年代とかだな。
「どした?」
「夏帆は、こういう場所とか、平気なんだ?」
「いや、初めてだよ。何事もやんなきゃ。行くぞ!」
腕をグイッと。前までは短い髪で、運動部だったから、こっちもそういうもんなんだと、見てた。
──のばそうと思ったのは、どんな理由?
「ふふっ! ずらっと、串を並べちゃいましたな~」
「料金どのくらいなんだよ……」
「あたしは安いところしか、寄らないの。はい、かんぱーい!」
弾ける泡、喉にくる刺激。自然と、「──あぁ~…」とか。歳重ねた。今のところ歳だけだ。中身は、べつに。
「司が結婚してるとはねー。可愛いの?」
「付き合ってる段階。たまに泊まったりとかな、勝手に話を進めんな?」
「そこまでいって、やっぱ無理は無いわ。相手がかわいそう」
思っていた事と、訪れた結果は、大きく違い。どんな本を読むより、知らない人が綴ったブログが役に立つ。
「わからない事だらけだよ。何事もやるんでしょ?」
酔いがまわっているのか、頬はあかく、とろんとした眼。
「うるさいよ、もう時効だから言うか。司のこと好きだった」
「はい?」
「二度も言わせるな」
そのときになってみないと分からない。なってみても、不思議に思う。緊張の刺激と、あとにくる甘い酔い。
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