舌にころがす、金平糖

糸花てと

第1話 ぽかーん

 帰りのHRがおわった。クラスメイトの帰り支度で、教室がさわがしくなる。ポケットのなかでふるえてた、スマホに返事。


 既読がついて、『もう着いた』の文字。


 教室、うしろの引き戸。腕まくり、汗をぬぐう彼を見るだけで、高鳴る鼓動。


「お待たせしました」


「待ってないよ?」のあとすぐに、おっきな手。たぶん、つなぐって事だよね。


「学校出てから、で……ダメかな?」


 なんて言ったあとに、やっぱり触れたかったかも、とか。──もう、あたしのばか。


 ポンポンってきたあとに、彼の低いこえ。「わかった」


 されて思う。少女マンガでの、あたまポンポンされるやつ。はずかしい、うれしい。


 よこならびに歩くだけ。それだけで、満たされる。


「お? 手、つなぎたくなった?」


 シャツの捲ってある部分を掴んだ、……っていうか、つかんじゃった。


 …──!!


 いま、なにしたの?


「とりあえず、頬っぺたな。反応かわいすぎ」


 も、え?……もしかして、キス、した?


 うぅ……むずかしい。



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