第75話 ぞく しょうせつ(いもうと10)


「と、まぁ。この辺は覚えたら終わりのただの技術論だ。で、ここからは作品としてのお話。俺はいい作品だと思ったよ」


「……えっと、ほんと?」


 「いもうと」がぱぁっと顔をほころばせた。


「ほんとだよ。なんていうか妙なリアリティを感じるんだよな。まるでモデルがいるみたいだ」


「え、あ、そ、そんなことは……ないよ?」


「? そりゃそうだろ? 今のはただの比喩だよ」


「だ、だよね」


「作家を目指すご主人様を、言葉を解す猫が見守るって設定はオリジナリティがあってよくできていると思う。よくある日常系あるある作品なのに、視点をファンタジーな猫目線にすることで、独特の味が出てるんだよなぁ」


「あ、うん!」


「猫を選んだのもポイントが高いな。猫を好きな人は多いから。大きな母数を相手にするのは大切だ。その分、興味を持ってくれる人が多いってことだから」


「うーんと、そこまでは考えてなかったかな?」


「しかも荒削りな中にあっても、書き手が猫を好きだって気持ちがこれでもかって伝わってくるからさ。これなら猫好きの読者は共感してくれるはずだ。というか俺がめっちゃ共感した」


「共感してくれたんだ……」


「じゃ、総評だ。初めてでこれなら及第点だと思うぞ。まぁプロでもなんでもない俺が言うのもなんなんだけど」


「えへへ、お兄ちゃんに褒められちゃった……」


「でも褒めはしたけど、ちゃんと技術的な練習は必要だからな? 日常系は漫画は割と作りやすいけど、文字だと文章力でゆるーい独特の雰囲気を作り出さないといけない難しいジャンルなんだ。今のところ、3話も読んだらブラバされちゃうからな?」


「わかってますよーだ! えへへ、褒められちゃった……むふ」


 この日は終始、ご満悦な「いもうと」だった。

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