第74話 しょうせつ(いもうと9)

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「お兄ちゃん、わたしも小説を書いてみたんだ。読んで感想ちょうだい」


「久しぶりに訪ねてきたと思ったら、いきなりだな、おい」


「だって一生懸命、小説を書いてたんだもん」


「ああそれでずっと顔を出さなかったのか……」


「あ、さみしかった? お兄ちゃんはほんとさみしんぼだよねー」


「いや一言もそんなことは言ってないんだけど……」


 とかなんとかいいつつも、「いもうと」の開いたワードファイルを読み始めたご主人様。


 基本的に「いもうと」には激甘のご主人様であるからして。


 …………

 ……


「忌憚のない意見をよろしくね」


「そうだな……まず語尾が全部『~~した。』だろ。さすがに単調すぎる」

「うぐっ……」


「猫とご主人様の会話文主体なのに、その会話に違和感がところどころあるな。この2人には暗黙の了解事項でも、読者には何のことだかわからないんだから、最低限は読者に伝わるように地の文とかで書いておかないと」


「うん……」


「あと――」


 容赦ないダメ出しの連発に「いもうと」がしょんぼりしてしまった。



(つづく)

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