第49話 くー、すー……

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「くー、すー……くー、すー……」


 規則正しい呼吸の音が、机に向かうご主人様から聞こえてきた。

 どうやら執筆中に寝落ちしてしまったようだ。


 時刻は午前の3時前。


 ご主人様ときたら、


「今日はアイデアが溢れてくる……! 何時だろうと関係ない、こういう日は書けるだけ書く……!」


 そう言って今の今、本当に寝落ちする寸前までひたすらに書き続けていたのだった。


「くー、すー……」


 机に突っ伏して規則正しい寝息を立てるご主人様だけれど、初夏とは言えまだまだ朝夕は涼しい。


 このままでは風邪をひいてしまうと危惧した吾輩は、椅子を足場にぴょーんとジャンプすると、ご主人様がつっぷしている机の上に降り立った。



 そしておでこを


 こつん、こつん。


 こつん、こつん、


 と、完全にぐっすりなご主人様の頭へ軽当てしていく。


 何回か当てたところで、


 「はっ――!?」 


 ご主人様が目を覚ましてがばっと身体を起こした。


「うわっ、もう3時回ってるじゃないか……いつのまにか寝落ちしちゃってたのか。お、ちび太、お前が起こしてくれたのか? って、ま、そんなわけないか。うん、寝よ寝よ……」


 そうして吾輩を抱っこすると、もそもそとベッドにもぐりこむご主人様だった。


 親の心、子知らず――ならぬ猫の心、飼い主知らず。


 一仕事終えた吾輩も、ご主人様の腕の中でぐっすりと眠りにつくのだった。

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