第48話 ふぁんでるわーるすりょく

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



 ぺたぺた


 ぺたぺた


 ぺたぺた


 ぺたぺた


「うーん、やっぱ無理か……」


 吾輩を抱っこしながら、壁ににくきゅうをぺたぺた押し当てていたのをやめると、ご主人様が小さく呟いた。


「肉球にファンデルワールス力はないんだな……」


 諜報活動(ネットサーフィン)中に、ヤモリが壁にくっつくことができるのが原子と原子が引き合う『ふぁんでるわーるすりょく』であることを知ったご主人様。


 小説家志望らしく好奇心旺盛なご主人様は、吾輩の肉球にも同じ力があるかもしれないと考え、確認と新発見のために壁に押し当てていたのだった。


 どう考えても無理なのだが、どんなことでもまずは試しにやってみようという、そんなご主人様の前向きな姿勢を、吾輩はけっこう好きなのだった。

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