第37話 じゅうにんといろ

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「十人十色か……ふむ……」


 ご主人様は唐突にそう呟くと執筆の手を止めた。


 なにやらうんうん考え込み出したご主人様を、吾輩はうたた寝しながら耳をピクピクさせることで、なんとはなしに「耳ピコピコ相づち」をうつ。


 ちなみにこういう時のご主人様は、


「『色』って『エロ』って意味だよな……『色町』とか『英雄色を好む』とか」


 たいていがどうでもいいことを考えていると相場が決まっていた。


「つまり十人十色って四字熟語は、みんなそれぞれのエロい性癖を持っているという意味に他ならない! やれやれ。また一つ、日本語を深く理解してしまったぜ……」


 ……今日もご主人様はどこまでも平常運転だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る