第36話 しょくしつ
吾輩はネコである。
名前はちび太。
「ただいま……」
ご主人様が帰宅した。
いつもより2時間は遅い帰宅時間だ。
声にも張りがなかった。
なにかあったのだろうか?
いやなにかがあったのは既に明白だった。
「ううっ、聞いてくれよちび太」
吾輩を見たご主人様が疲れた顔で駆け寄ってきた。
そのまま吾輩をぎゅうっと抱っこする。
「仕事帰りにいいプロットが思い浮かんだからさ、公園のベンチに座ってメモをとってたんだよ。そしたらいきなりパトカーが来て、不審者扱いで職務質問受けたんだ……」
ご、ご主人様……。
「しかも警察官がさ、メモ帳になにを書いていたのか見せなさいって言うんだよ? やましいことがなければ見せられるだろうって。でもさ――」
ご主人様はそこで一旦言葉を切ると、
「――このメモ帳は、俺のアイデアやプロットが詰まった門外不出のネタ帳なんだ。作家の魂なんだよ。だから『これは誰にも見せられません』って言ったら、なんとそこから2時間も押し問答することになったんだ……」
公園で座ってメモを取っているだけで職質されるとか、いったいどんな星のもとに生まれたらそんなことになるのか……。
ご主人様の行く末が少々、心配になる吾輩だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます