第10話 てばさきを、まてばさきなる、ひやしざけ
吾輩はネコである。
名前はちび太。
「手羽先を、待てば先なる、冷やし酒」
ご主人様が俳句を詠んでいた。
「手羽先」と、待「てば先」がかかった、高度に親父ギャグした俳句である。
なんでも今日6月14日は、「あいどるますたー」なるソシャゲの「たかがき・かえで」というキャラの誕生日なのだそうだ。
「俺は絵が描けない代わりに、作家志望らしく言葉でお祝いを表現する! この日のために用意した、楓さんの大好きなお酒に絡めた渾身の親父ギャグ俳句だ! ツイートよ、楓さんに届け!」
もちろん小説家デビューするまでは、誘惑の多いソシャゲはやらないと心に決めているご主人様は、このソシャゲをプレイしたことがない。
「楓さんは俺が将来担当予定のアイドルなんだ。25歳だけど、大人びた中に時おり混じる子供っぽい無邪気さが、ピンズド(ピンポイントでズドン)なんだよ」
なのだそうだ。
ちなみに無駄に創作能力を浪費――こほん、使用したこの渾身のツイートも「いいね」×1だった。
しかしご主人様いわく、
「この1件はきっと楓さんが『いいね』してくれたに違いない。さすが楓さん、優しいよな」
と、今日も超絶ポジティブなご主人様だった。
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